1940年代に公開されたおすすめ名作映画

今回は1940年代に公開されたおすすめ映画を紹介していきます。1940年代といえば今から約80年前という昔の時代になりますが、しかし作品を観ていくと今の時代にも通じる問題点を描いた作品も多くあり、テクロノジーはたしかに大幅に進化したものの、人間の本質というのはそう変わっていないのではないかと思わされます。

素晴らしき哉、人生!

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アイ ヴィー シー

 

『素晴らしき哉、人生!』は1946年に公開されたフランク・キャプラ監督、ジェームズ・スチュアート主演のファンタジー映画です。

二級天使のクラメンスは、大天使から自殺直前のある男を救うように命じられます。クラメンスは彼を自殺から救うために、今までの彼の人生を見ていきます。

公開当初は興行的に失敗し、この作品を機にキャプラははっきりと寡作になっていきます。

しかし、その後にテレビで繰り返し放送されたことから再評価の動きが加速。

今ではアメリカ映画の名作の中に必ずと言っていいほどランクインされる作品となりました。

自殺寸前で追い込まれた男のこれまでの人生を追いながら、彼がもしこの世界にいなければどのような世界になっていたかを見せていきます。

当時の映画界の巨匠とも言えるフランク・キャプラ。彼の持ち味であるヒューマニズムやハッピーエンドで終わる作風は「キャプラスク」とも呼ばれていますが、本作公開当時は戦争も終わった直後であり、興行的な不振の背景には当時の人々には「キャプラスク」には感情移入しづらかったという点もあるのかもしれません。

逆に同年公開で高い評価を得たのは、キャプラの盟友でもあるウィリアム・ワイラーの手掛けた『我等の生涯の最良の年』でした。同作は戦争からの復員兵たちを主人公にした作品で、同時の時代ともマッチしていたのではないかと思います。

とは言え、現代においては『素晴らしき哉、人生!』の方が有名な人気作と評価は逆転しています。

個人的には時代のせいもあったとは思いますが、それほど振るわなかったのが不思議なほどの作品。確かにファンタジックな作品ではあるものの、今観ても面白く、また感動できる映画だと思います。

群衆

こちらもフランク・キャプラの作品になりますね。

『群衆』は1941年に公開されたフランク・キャプラ監督、ゲイリー・クーパー主演のドラマ映画。ファンタジックな作風の『素晴らしき哉、人生!』とは異なり、こちらでは大衆の恐ろしさを描いています。

後にフランク・キャプラの息子は、キャプラは本作で当時アメリカにも押し寄せていたファシズムの波に警報を鳴らすべくこの作品を撮ったと語っています。

今作は一人の男を人気者に仕上げ、彼を通して大衆を操ろうとする政治家と、簡単に操られてしまう大衆の姿が描かれます。

よく見てみれば、こういうことって今でも普通に起きていることだと思うんです。『群衆』のジョン・ドゥは無学な男なのですが、だからこそ人々は彼の境遇に共感し、彼を時代のアイコンとして崇めるようになるのです。

今から80年以上も前の作品ですが、今作の内容は今の政治にも通じる普遍性と危険性を持ち合わせています。

オール・ザ・キングスメン

『オール・ザ・キングスメン』は年に公開された監督主演のドラマ映画です。

純粋な思いから政治の世界へ乗り込んだ男が、権力欲にとりつかれ、堕落していく様を描いています。

『オール・ザ・キングスメン』は実在の政治家であったヒューイ・ロングの生涯をモチーフにしています。

ポピュリズム政治がいかに簡単に独裁政治へと変わっていくかが描かれています。

アカデミー賞では、作品賞、主演男優賞、助演女優賞に輝いた名作ですが、「政治不信を招きかねない」と戦後の日本ではGHQによって公開が長らく禁じられてきた問題作でもあります。

先にも紹介した『群衆』とともに、ポピュリズム政治とは何かを考える切っ掛けになるかもしれません。

ちなみにこの『オール・ザ・キングスメン』は2006年にショーン・ペン主演でリメイクされています。いかに本作で描かれていることがいつの時代にも存在する問題なのかを示しているように思います。

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。