ゴーン・ガール
一つの事件が浮かび上がらせる、夫婦の本当の姿
『ゴーン・ガール』は2015年に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督、ベン・アフレック主演のサスペンス映画です。原作はギリアン・フリンによる同名小説。
周囲からは順風満帆だと思われていたニックとエイミーの結婚生活。そんな二人の結婚5年目の朝、妻のエイミーは突如失踪します。自宅には争ったような跡と血痕。
人気絵本『アメイジング・エイミー 』のモデルとしても有名だったエイミーの失踪は一大ニュースとなり、メディアに連日出てエイミーの無事を訴えるニックの姿に、世間はある疑惑を抱きます。
「夫が妻を殺害したのではないか?」
メディア報道が加熱するなかでニックの教え子との不倫が暴かれ、当初はニックに同情的だった世論も次第にニックが犯人ではないかと疑いの目を向けるようになります。
原作はキリアン・フリンの同名小説。フリンは映画版の脚本も担当しています。
ギリアン・フリンによると、『ゴーン・ガール』の着想を得たのは1998年の映画『メリーに首ったけ』がきっかけだったとのこと。
『メリーに首ったけ』はベンスティラーとキャメロン・ディアスが共演したラブコメ映画なのですが、その中でキャメロン・ディアス演じるメリーのキャラクターがギリアン・フリンには「男に都合の良い女」に見えてしまったのだそう。
事実、『ゴーン・ガール』のエイミーから見た結婚生活はニックに合わせて「良い妻」を演じたものでした。しかし、ニックは教え子と不倫します。そこでエイミーはある計画を立てたのでした。
そして、やはりデヴィッド・フィンチャーはこうしたダークなサスペンスを撮らせると上手いですね。
マッチポイント
]名匠ウディ・アレンの描く、傑作サスペンス
『マッチポイント』は2005年に公開されたウディ・アレン監督、 ジョナサン・リース=マイヤーズ主演のサスペンス映画です。
普段製作する映画はコメディの多いウディ・アレンですが、今作はスリラー・サスペンスとも呼ぶべき映画に仕上がっています。
ウディ・アレンの作品の中で『アニー・ホール』や『マンハッタン』などのロマンティック・コメディが高い評価を得ていますが、サスペンス作である『マッチポイント』もまたそれに並ぶ評価を受けています。
元テニスプレイヤーのクリスはビジネスマンとしての転身と成功を求め、上流階級出のトムと知り合い、その妹のクロエと婚約しますが、トムの婚約者であるノラにも惹かれていきます。
ドエトエフスキーの『罪と罰』をモチーフにしながらも、その結末はウディ・アレンらしい実に皮肉の効いたもの。
本当の罰とは何か。それは刑務所で償うものなのか、それとも償う機会すら与えられずに、罪が永遠に葬り去られたままの状態なのか、それとも見ず知らずの全く別の人物が、自分の罪を被ってしまったことなのか。
ウディ・アレンは作風としてはコメディが圧倒的に多いものの、ウディ・アレン本人のシニカルさやアイロニーといった要素はサスペンス映画にこそ、実は活きるのではないでしょうか。
高い評価の理由もうなづける、ウディ・アレンのファンならずともおすすめの一本です。