今回は冤罪をテーマにしたおすすめの映画を紹介します。実話をもとにしたものから、フィクションに至るまで、幅広く作品をセレクトしています。
グリーンマイル
心優しい死刑囚に与えられた特殊な能力とは?
『グリーンマイル』は2000年に公開されたフランク・ダラボン監督、トム・ハンクス主演のドラマ映画です。
少女二人を殺害した罪で刑務所に送られてきた死刑囚のジョン・コーフィー。
しかし、その罪とは裏腹にコーフィー自身は穏やかで優しい大男なのでした。
そしてコーフィーには特別な力があり、トム・ハンクス演じる看守のポールの病気や瀕死のネズミを治癒させるなどの奇跡を起こしました。
ポールはコーフィーの冤罪を疑い、彼をこのまま死刑にすることに戸惑いを覚えます。
そして、ある時コーフィーはポールに自らの手を握らせます。その時にポールはコーフィーが無実であり、亡くなった少女二人を治癒しようとしていたことが明らかになります。
しかし、コーフィーにはある思いがありました。
原作はスティーヴン・キングの同名小説。スティーヴン・キングと言えば、ホラーのイメージが強いかもしれませんが、今作はハートフルな物語。ただ、エンディングでは少しの苦みも味わわせてくれます。
ショーシャンクの空に
冤罪で囚われた主人公が持ち続けた希望
『ショーシャンクの空に』は1994年に公開されたフランク・ダラボン監督、ティム・ロビンス主演のドラマ映画です。
無実の罪で投獄された銀行家のアンディが、刑務所の中で希望を失わずに生きる姿を描いています。
こちらも原作はスティーヴン・キング。キングの短編小説『刑務所のリタ・ヘイワース』が原作になっています。
公開時は『フォレスト・ガンプ』のヒットの影に隠れてしまった作品でしたが、その後レンタル時にジワジワと評価を上げていった映画であり、今では名作映画の常連入りを果たすほどの傑作として知られています。
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
有罪か、無罪か?誰もが驚く命を懸けたメッセージ
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』は2003年に公開されたアラン・パーカー監督、ケヴィン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット主演のサスペンス映画です。
死刑廃止運動家のデビッド・ゲイルは同僚の女性をレイプし、殺害したことで死刑宣告を受けています。死刑の執行まで残り三日となった日、ゲイルは新聞記者のビッティーをインタビュアーに指名します。
最初はゲイルの有罪を信じて疑わなかったビッティーですが、インタビューを進めていくうちにゲイルは無罪なのではないかという思いを強くしていきます。
死刑執行が迫る中、果たしてビッティーはゲイルの無罪を証明することができるのでしょうか?
最後には誰もが驚く結末が待ち受けています。
ゴーン・ガール
妻の失踪。一つの事件が明らかにする夫婦の本当の姿
『ゴーン・ガール』は2015年に公開されたサスペンス映画。
ギリアン・フリンの同名小説をデヴィッド・フィンチャー監督とベン・アフレック、ロザンムド・パイク主演で映画化しています。今作では原作者のギリアン・フリンも脚本を担当しています。
エイミーとニックの夫婦は周囲からもおしどり夫婦としてみられる有名なカップルでしたが、結婚5年目の朝、突如エイミーが失踪します。
家にあったのは大量の結婚と、夫の不貞を告発するエイミーの日記。
二人が有名なカップルとあってマスコミもこの事件をセンセーショナルに報道します。当初は世間の同情を集めていたニックでしたが、彼の過去の浮気などが明るみになるにつれ、世間は「エイミーを殺したのはニックではないか?」と彼への疑惑を深めていきます。
ここからのストーリーはネタバレになるので言えませんが、原作者のギリアン・フリンは『メリーに首ったけ』を観て本作のアイデアを思いついたそう。
黒い司法 0%からの奇跡
人種差別と冤罪の関係を告発する、社会派ドラマ
『黒い司法 0%からの奇跡』は2020年に公開されたデスティン・ダニエル・クレットン監督、マイケル・B・ジョーダン主演のドラマ映画。
冤罪事件を専門に扱う弁護士ブライアン・スティーヴンソンのもとに舞い込んできた白人女性を殺害した容疑で死刑判決を受けているウォルター・マクミリアンという黒人男性の弁護でした。ウォルターには彼が殺人を行ったという証拠は何一つありませんでしたが、検察は誘導尋問などを駆使して、彼を殺人犯に仕立て上げました。
ウォルターの無実を確信したブライアンは彼の冤罪を晴らすために奔走します。
アメリカに今も根深く息づいている人種差別の問題と、死刑制度の是非にまで踏み込んだ本作。『黒い司法 0%からの奇跡』は実話をもとにした作品でもあり、原作はブライアン・スティーヴンソンの著作『黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪』の映画化になります。
このウォルターの事件が起きたのは1987年。ここまでの露骨な冤罪事件が近年でも起きていることには驚きました。
バラク・オバマ元大統領も「2019年のお気に入り映画」の1つに本作を選んでいます。
父の祈りを
イギリス司法史上最大の汚点となった冤罪事件を描く
『父の祈りを』は1993年に公開されたジム・シェリダン監督、ダニエル・デイ=ルイス主演のドラマ映画。
1974年に起きたギルフォード・パブ爆破事件と、それによって誤認逮捕された4人の一人、ジェリー・コンロンとその父であるジュゼッペ・コンロンが自らの冤罪を晴らすために奮闘する物語です。
この事件はイギリス司法史上最大の汚点とも呼ばれ、長い間再審が行われなかったために、爆破事件の真犯人は捕まらないまま、時効を迎えています(コンロン親子が収監されて数年後、事件の犯人と名乗るIRAメンバーが現れますが、結局爆破事件の容疑者としては起訴されなかったようです)。
今作のおすすめポイントはやはり実力派の俳優の演技ではないでしょうか。
ジェリー・コンロンを演じたダニエル・デイ=ルイスは史上唯一のアカデミー主演男優賞を三度受賞したことからもわかるように、その演技力には目を見張るものがあります。
彼の実力を示すエピソードとして、2007年の作品『フィクサー』での演技でジョージ・クルーニーも第80回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされていました。しかし、同じく主演男優賞にもダニエル・デイ=ルイスもノミネートされていたことから「自分が主演男優賞を受賞? ダニエルがいるから無理だよ」と答えたという逸話があります。
また、ダニエル・デイ=ルイスはその徹底した役作りでも有名で、今作『父の祈りを』では撮影中は北アイルランド訛りを徹底して話し、体重も約15Kg減量。夜は独房のセットで過ごし、世間に非難される被疑者になりきるために、撮影クルーに自分自身に向かって罵りや水を投げつけさせるなどの役作りを行っています。
フルートベール駅で
今も続く人種差別の実話を映画化した良作
『フルートベール駅で』は年に公開されたライアン・クーグラー監督、マイケル・B・ジョーダン主演のドラマ映画です。
2009年に起きた、オスカー・グラント三世射殺事件を元に映画化した作品です。
マイケル・B・ジョーダン演じるオスカー・グラント三世は、恋人には浮気がバレ、務めていた食料品店はクビになってしまうなど八方塞がりの状態でした。
かつて麻薬の売人をしていたオスカーは再びマリファナを売ることで生活費を稼ごうとしますが、今までの生活を断ち切るために、迷った末にマリファナを海に捨てます。
気分の晴れないオスカーは、ニューイヤーフェスティバルの花火を見に行こうとしますが、それが悲劇の始まりになるのでした。
オスカー・グラントの最期の一日を映画化した作品。『クリード』シリーズや『ブラックパンサー』シリーズでその地位を確固たるものにしたライアン・クーグラーですが、長編デビュー作となる本作の時点ですでにその才能はズバ抜けていることがわかります。
個人的にこの作品は人種差別を訴えているのは間違いないと思うのですが、それ以上に一人ひとりの人生にはかけがえのない価値があることを示していると思います。