今回は数多あるホラー映画の中でも人間が一番怖い作品を選んでみました。
完全に個人的な主観ですが、1970年代は『エクソシスト』や『サスペリア』などのオカルト系が多く、1980年代は流血描写などにこだわるスラッシャー系の映画、そして1990年代に人間が一番怖いサイコホラー系の映画が増えてきたような印象があります。
では、人間こそが一番怖いと思えるおすすめのホラー映画を紹介します。
羊たちの沈黙
アカデミー賞主要5部門を制覇した名作
『羊たちの沈黙』は1991年に公開されたジョナサン・デミ監督、ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス主演のサイコ・ホラー映画です。
FB実習生のクラリス・スターリングは上司のクロフォードからある依頼を受けます。それは世間を騒がせている連続殺人犯、通称「バッファロー・ビル」の人間像を探り、逮捕に結びつけるため、かつてのビルの主治医であり、「人食いハンニバル」と呼ばれる猟奇殺人犯ハンニバル・レクターにアドバイスをもらうこと。
クラリスは一人レクターの独房へ向かい、バッファロー・ビルのヒントを得ようとします。
当初はクラリスを追い払おうとしていたレクター博士でしたが、クラリスが背負っているトラウマを聞き出すという条件で捜査に協力することに。そこにはレクターのある思惑が潜んでいました。
アカデミー賞主要5部門を独占したサイコ・ホラーの名作です。
ホラー的な怖さというよりも、クラリスとレクター博士の会話のスリリングさやスリラーとしての魅力が強いと思います。とはいっても子供の頃は怖すぎて途中で観るのを断念した思い出もあるのですが。
主演のジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス両名ともアカデミー賞主演女優賞、主演男優賞を獲得するなどその演技力も堪能してほしいと思います。
ちなみにアンソニー・ホプキンスはレクター博士を演じるにあたり、より恐怖を演出するために「まばたきをしない」という演技を取り入れたそうです。
大人になってからは大好きな映画のひとつ。紛れもない名作だと思います。これも本当におすすめの映画ですね。
ミザリー
「人が怖い」映画の代表作!キャシー・ベイツの演技は必見!
『ミザリー』は1990年に公開されたロブ・ライナー監督、キャシー・ベイツ主演のホラー映画です。原作はスティーブン・キングの同名小説。
まさに人間が怖い系の作品の代表格ではないでしょうか。
人気小説『ミザリー』シリーズの作家ポール・シェルダンは、交通事故を起こし、近くの看護婦のアニーに救出され、彼女の上で治療を受けることになります。アニーは『ミザリー』シリーズの熱狂的ファンであり、シェルダンが人気小説『ミザリー』シリーズの作者だと知るとその結末に納得せず、作品の結末の変更をシェルダンに要求するなど徐々にその異常性があらわになっていきます。
今作でアニーを演じたキャシー・ベイツはアカデミー賞で主演女優賞を受賞するなど高い評価を受けています。
エスター
イザベル・ファーマンの巧さに脱帽!サイコ・ホラーの人気作
『エスター』は2008年に公開されたイザベル・ファーマン主演のホラーサスペンス映画です。
子供を流産した夫婦が養子として引き取ったひとりの女の子、エスター。年齢の割に大人びてしっかりしているエスターでしたが、不可解な行動も見られる不思議な子供でした。
そして、エスターの周りでは不審な死亡事故が相次ぎます。エスターに疑問を抱く妻でしたが、夫はそんな妻の意見を意にも介しません。
一見賢くておとなしく見えた彼女には恐ろしい秘密がありました。
ホラー映画とどんでん返しの要素を併せ持った作品。主演を務めたイザベル・ファーマンは本作の撮影時はわずか12歳でしたが、素晴らしい演技を見せてくれています。
2023年には続編であり『エスター』の前日譚ともなる『エスター ファースト・キル』が公開されています。
なんと前作から13年経っても再びエスター役はイザベル・ファーマンが続投。映画ファンを驚かせたのは言うまでもありません。
食人族
ホラーだけではないメッセージが込められた大ヒット作
『食人族』は1982年に公開されたホラー映画です。
今作では擬似ドキュメンタリーの手法を使っており、ホラー映画としては異例の大ヒットを記録した作品でもあります。
アマゾン川上流未開の地「グリーン・インフェルノ」に向かった探検隊たちが行方不明に。
捜索へ向かったジョン・モンロー教授がグリーン・インフェルノの村で見つけたフィルムが流出した…という体のフェイクドキュメンタリー・ホラー。
また、ドキュメンタリーの体で世界の奇襲を紹介する作品をモンド映画と呼びますが、本作のヒット以降、多くのモンド映画が製作されました。
まだネットもなかった時代、フェイク・ドキュメンタリーというのとに気づかぬまま「これは本当に起こったことだ」と誤解する観客が続出したらしいです。
この作品はここで紹介した他の映画とは異なり、食人族ではなくて、彼らを人間扱いせず、彼らの怒りが極限に達するまでもてあそんだ我々文明人側こそがいちばん恐ろしいのではないかという気持ちになります。
ファニーゲーム
暴力の本質を問い質す、ミヒャエル・ハネケの問題作
『ファニーゲーム』は1997年に公開されたミヒャエル・ハネケ監督、スザンヌ・ロタール主演のホラー映画。
胸糞映画、救いのない映画としても有名な本作ですが、監督のミヒャエル・ハネケは実際の暴力がアクション映画などで演出されるエンターテインメントなものではなく、本当に痛々しいものであることを伝えたくて本作を制作したといいます。
実際に本作では観客の予想を次から次へと裏切る展開の連続で、それもあって「胸糞映画」と言われている面もあると思います。
第50回カンヌ国際映画祭で上映された際も、あまりの凄惨で残酷な内容から映画監督のヴィム・ヴェンダースや観客等が途中で席を立つ事態となりました。
しかし、ミヒャエル・ハネケが本作に込めた想いを知るとまた見方も変わってきます。
「暴力とは何か」『ファニーゲーム』はそのことを問いかけ続けています。
シャイニング
原作者との軋轢も有名なホラー映画の名作
『シャイニング』は1980年に公開されたホラー映画です。監督はスタンリー・キューブリック、主演はジャック・ニコルソンが務めています。
巨匠スタンリー・キューブリックが挑んだホラー映画。
コロラド州の山の上にあるホテル、オーバールックホテルにジャック・トランスとその家族である妻のウェンディ、息子のダニーがやって来ます。
目的はこのホテルの住み込みの管理人の仕事を得ること。ジャックは支配人からオーバールックホテルの忌まわしい過去を聞かされます。それは以前の管理人が精神を病み、家族を惨殺して自殺したという内容でした。しかし、ジャックは気にも留めず家族とホテルに住むことを決めます。
しかし、超能力を持つダニーはホテルで起きる不可思議な現象を体験し、このホテルには「何か」がいることに気づきます。
また、ジャックは孤独な暮らしに徐々に精神を病み、ホテルの「何か」と親しく交わるようになります。そして、ジャックは狂気に飲み込まれ、ウェンディやダニーを殺害しようとします。
原作はスティーブン・キングの同名小説ですが、キューブリックは『シャイニング』をオカルト・ホラーではなく、より人間の怖さが強調されるように再構築しています(それによってスティーブン・キングから猛批判を受けることにも繋がるのですが)。
キューブリックらしい完璧主義と演出がその他のホラーとは一線を画す格調高さ、芸術性を生み出しています。
シャイニングをオマージュした映画や他作品は数知れず。まさにホラー映画の名作と呼べる作品です。