今回は政治をテーマにしたおすすめの映画を紹介します。
依然として日本の選挙の投票率は高くないのですが、その一つは政治を身近なものと捉えることが難しいこと、そして一票を投じてもたかが一票で日本を変えることは出来ないという無力感もあるのかもしれません。
個人的には映画を始めとしてもっとエンターテインメント界が政治をコンテンツとして取り入れてくれたら、様々な年代の人が政治に親しみをもってくれるのではないかなと思っています。
今回セレクトした映画を見てもらえれば分かる通り、ほぼ海外の作品となっています。
邦画も一つセレクトしましたが、真面目なものというよりもコメディなので、もっと真面目に政治と向き合った作品も増えてほしいところ。
しかし、とりあえずはこのおすすめの映画を通じて、政治にも興味を持ってもらえたらと思います。
というわけで、政治をテーマにしたおすすめの映画を紹介します。
スミス都に行く
フランク・キャプラが描く政治映画の名作
『スミス都に行く』は1939年に公開されたフランク・キャプラ監督、ジェームズ・スチュアート主演のドラマ映画。
政治とは無縁だった田舎のボーイスカウトのスミスがひょんなことから、上院議員としてワシントンへ赴くことに。
しかし、ワシントンでスミスが見たのは腐敗した政治の現実でした。
スミスはアメリカの民主主義の精神と理想を胸に、一人不正と戦っていきます。
民主主義の教科書とも言える作品で、イタリアからの移民であるキャプラのアメリカへの強い思慕が伺える作品です。
今の時代から見ると、あまり捻りのないストーリーかもしれませんが、アメリカの政治を貫く精神を知るのにはおすすめの映画です。
記憶にございません!
三谷幸喜、復活!記憶をなくした総理のドタバタコメディ
『記憶にございません!』は2019年に公開された三谷幸喜監督、中井貴一主演の政治コメディ映画です。
演説中に頭に石をぶつけられた黒田総理。史上最悪の総理と呼ばれた黒田総理はそれまでの記憶を一切失ってしまいます。
井坂をはじめとする首相秘書官たちの必死のフォローの中、黒田は一切のしがらみを持たない総理として、自分の理想の政治を実現していきます。
三谷幸喜監督の映画の中でも文句なしにおすすめできる一本です。
もともとテレビドラマでも『総理と呼ばないで』など政治モノを手掛けた経験を持つ三谷監督。今作では『総理と呼ばないで』のエッセンスも感じさせながらもよりコメディ要素の強い作品となりました。ちなみに頭に何かがぶつかって性格が変わるというのは、三谷幸喜監督が幼い頃、転校した時にうまく自分を変えることのできる方法として妄想していたものだそう。
今作の前の『ギャラクシー街道』では興行的にも批評的にも外れてしまった作品でしたが、『記憶にございません!』は三谷幸喜の完全復活を証明するかのような作品でした。おすすめの映画です。
フロントランナー
実話の映画化!大統領候補に必要とされるものとは?
『フロントランナー』は2018年に公開されたジェイソン・ライトマン監督、ヒュー・ジャックマン主演の政治ドラマ映画。
1988年のアメリカ大統領選挙において、最有力候補(フロント・ランナー)として人気だったゲイリー・ハート。彼がスキャンダルで大統領選挙から撤退せざるを得なくなる様を描いています。
レーガン大統領の政策を批判し、早くからITに着目した政策を提案するなど、先見の明も持ち合わせていた若手の有望な政治家、ゲイリー・ハート。かれは大統領選挙において最有力候補と見なされていましたが、学生と不倫していたことが明るみに出てしまいます。
プライベートでのできごとが、全米中に大きなスキャンダルとして報じられてしまったハートはその若さと政治的な先見性を持っていましたが、わずか三週間で大統領選挙から撤退してしまいます。
政策ではなく、プライベートの出来事が政治家の判断材料となってしまうのは、良いことなのか、悪いことなのか?
報道におけるマスコミの役割や、公人としての行動など、今だからこそ観ておきたいテーマの作品ではないでしょうか?
リンカーン
奴隷解放のために戦った、リンカーンの本当の姿
『リンカーン』は2012年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督、ダニエル・デイ=ルイス主演の伝記映画です。
「人民の人民の人民のための政治」の言葉と奴隷解放宣言で知られるリンカーンですが、今作では奴隷解放を実現させるために、その根拠となる合衆国憲法の改正に必死に取り組むリンカーンの姿がクローズアップされています。
リンカーンを演じたダニエル・デイ=ルイスは本作で史上初となるアカデミー賞主演男優賞を三度受賞した俳優となりました。
また、リンカーンの妻であるメアリー・トッドを演じたサリー・ホーキンスも「最も完璧なリンカーン夫人」と呼ばれるほどリアリティのあるリンカーン夫人を演じています。
リンカーンを英雄や理想主義者として描くのではなく、現実の中で理想を実現していくことの泥臭さ、困難さが描かれています。
「コンパスは進むべき方向を示してくれるが、途中にどんな困難が待っているかは教えてくれない」
劇中でリンカーンはそう語ります。
そして、人々の平等のために、敵対勢力を取り込み、時として裏工作も辞さない、泥臭いリンカーンの姿が描かれます。
リンカーンがどれだけの思いを持って平等や自由な社会の実現を目指していたかがわかります。俳優陣の卓越した演技も含め、おすすめの作品です。
オール・ザ・キングスメン
ポピュリズムが独裁政治に変わる時
『オール・ザ・キングスメン』は1949年に公開されたロバート・ロッセン監督、ブロデリック・クロフォード主演の政治映画。
純粋な正義感から政治の世界へ踏み出したウィリー・スタークでしたが、彼はいつしか権力に取り憑かれ、強権的な支配を是とする政治家に変貌してしまいました。
大衆の人気取りで絶大な支持を受けていたスタークでしたが、その政治手腕は汚職そのもの。
昨今、政治におけるポピュリズムが目立つようにもなりましたが、70年以上前にも同じような状況は存在していたのだと痛感させられる、そんな作品です。
スーパーチューズデー 〜正義を売った日〜
民主主義の名に隠された選挙活動の裏とは?
『スーパーチューズデー 〜正義を売った日〜』は2011年に公開された、ジョージ・クルーニー監督、脚本、ライアン・ゴズリング主演のドラマ映画。
大統領選挙における民主党代表を決める選挙の裏側を描いた作品です。
今作では実際に大統領選挙に立候補したハワード・ディーンの選挙を務めたボー・ウィリモンが原作となる戯曲を制作しています。決して綺麗事だけでは収まらない選挙活動の裏側はこれほど汚いのかと思い知らされます。
政治の理想と現実を描いた作品。おすすめです。
ブッシュ
オリバー・ストーンが描く、「歴代最低の大統領」ブッシュの姿
『ブッシュ』は2008年に公開されたオリバー・ストーン監督、主演の伝記映画です。
アメリカ大統領の歴史の中でも特に低い評価を受けられることの多いジョージ・W・ブッシュ大統領。もちろんオリバー・ストーンが描くブッシュ像も概ねそれに違わないものの、偉大な父親へのコンプレックスがブッシュの人生の根底にあったという見方をしています。
また、イラク戦争の開戦の本当の理由が中東の石油利権に絡んだものということを描いており、オリバー・ストーンの社会派の面や思想も強く出ている作品ではないでしょうか。