古くからホラー映画のリメイクは行われていましたが、2000年代に入ってから加速的に増えたような気がします。やはりVFXの進化や、新たな恐怖の表現などが増え、往年の名作を今の技術で再構成したくなるのも無理はないと思いますね。
さて、今回はそんなリメイクされたホラー映画の中からおすすめ作品を紹介します。
1980年代の少し古いものからまずは紹介していきます。
ザ・フライ
『ハエ男の恐怖』をリメイク!CG無しで描かれる特撮描写のグロテスクさは必見!
『ザ・フライ』は1985年に公開されたデヴィッド・クローネンバーグ監督、ジェフ・ゴールドブラム主演のSFホラー映画。
1954年に公開された『ハエ男の恐怖』のリメイク作となります。
テレポーテーションを研究している科学者のセスは実験中、装置の中に自分以外に一匹のハエが混ざっていたことに気づかないままテレポーテーションを行ってしまいます。実験は成功したかのように思われましたが、日が経つごとにハエのように変化を遂げていくようになります。
オリジナル版では、今作では全身が徐々にハエへと変わっていくという設定で、物凄くグロテスクに描かれています。特にセスの顎が取れるシーンなんて軽くトラウマではないでしょうか。
ここはデヴィッド・クローネンバーグ監督ならではの描写ですね。クローネンバーグは『スキャナーズ』など他の監督作品でも強烈な人体破壊描写がその特徴でもあります。
ただ、その結末はあまりに哀しく美しいもの。ハエのように変わっていくのは人体だけでなく、セスの思考も動物的に変わっていくところが本作の特筆すべき部分でもあるでしょう。
単なるゲテモノホラーではなく、哀しみも湛えたこの作品はホラー映画の中でも名作と呼んでいいのではないでしょうか。怖さやグロテスクさはもちろんオリジナルを超えていますが、作品の評価もオリジナル以上のものがあると思います。個人的にも好きな作品です。なんだかシェイクスピアの悲劇を読んだときと同じような哀しさと美しさが同居しているように感じます。
テキサス・チェーンソー
オリジナルより100倍怖い!リー・アーメイの怪演はここでも健在!
『テキサス・チェーンソー』は2003年に公開されたマーカス・ニスペル監督、ジェシカ・ビール主演のホラー映画です。
オリジナルは1973年に公開された『悪魔のいけにえ』。
今作はオリジナルの『悪魔のいけにえ』と比較しても段違いで怖い映画になっています。ただ、その分オリジナルにあった芸術性は少なくなり、狂人一家を描いた現代的ホラーとしての怖さが際立ったとも言えますが。
特にR・リー・アーメイの演じるホイト・ヒューイットはしばしばレザーフェイスよりも恐ろしいと評されます。
スタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』でも狂気の鬼軍曹役がハマっていましたが、今作でもまたリー・アーメイの狂気は健在。
オリジナルにあった独特の怖さや、ざらついた空気感、一つ間違えればコメディにも見えてしまう絶妙なバランスなどをこの作品に求めるのは正直厳しいとは思いますが、ただ恐怖という意味ではオリジナルの遥か上を行く出来栄えと言えるのではないかと思います。ホラー映画に純粋に怖さを求める人にはおすすめです。
ちなみにオリジナル版ではソーヤー一家だった家族の名前と家族構成もこの作品では一新されており、ババ・ソーヤーだったレザーフェイスの名前もトーマスブラウン・ヒューイットという名前になっています。
2006年には本作の続編となる『テキサス・チェーンソー ビギニング』も公開されました。続編とは言ってもこちらは『テキサス・チェーンソー』の前日譚にあたります。レザーフェイス誕生の瞬間を観たい人はこちらもおすすめです。
13日の金曜日
オリジナルの要素をバランスよくまとめた佳作
『13日の金曜日』は2009年に公開されたマーカス・ニスペル監督、 ジャレッド・パダレッキ主演のホラー映画です。
オリジナルは1980年に公開された『13日の金曜日』です。
オリジナル版での犯人はジェイソンの母親であるパメラ・ボーヒースでしたが、今作ではパメラの犯行をイントロダクションとして、ジェイソンがホッケーマスクをつけて暴れ回ります(ちなみにジェイソンがトレードマークであるホッケーマスクを被るのは3作目から)。
今作ではオリジナルの一作目に相当する母親のパメラ・ボーヒーズによる殺人はタイトルロールまでで処理し、その後はジェイソンによる殺人が映画のメインとなります。
正直に言ってしまうと、オリジナルの『13日の金曜日』はあまり怖くないので(音楽の盛り上がりで何かが起きることが容易に想像つくため)、オリジナルに比べれば続編やリメイク作の方が必然的に怖くなってしまうのですが。
単なるリメイクではなくて、オリジナル版が3作品かけて確立させたジェイソン像をこの一作でまとめて見せてしまうのは上手いですね。
また、『13日の金曜日』シリーズのもう一つの楽しみは、どのように人々がジェイソンに殺されるのかということ。ショッキングではありつつも、そのバリエーションの豊富さはシリーズ自体の長さもあり、他の追随を許さないレベルまで達しているのではないでしょうか。
今、多くの人が思い浮かべるホッケーマスクを被ったジェイソンが登場するのはオリジナル版の3作目から。そこにたどり着くまでのジェイソンらの歩みを踏まえつつ、きちんと観客の望むものを出してきたなという印象があります。
アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ
残酷描写が段違い!進化した復讐ホラー
『アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ』は2003年に公開されたスティーブン・R・モンロー監督、サラ・バトラー主演のホラー映画です。
カミーユ・キートンが主演した1978年の映画『悪魔のえじき』のリメイクにあたります。
オリジナルと比較すると、段違いに残酷描写がパワーアップ。殺害方法もバラエティ豊かになり、オリジナリティ溢れるものとなりました。
オリジナル版もそうなのですが、単なるホラーではなく、理不尽に暴力を受けた女性の復讐劇でもあるので、残酷描写はやはりキツイ部分があるのですが、一方で理不尽な性暴力を受けた女性の復讐ということで、残酷描写の中にもどこか爽快感があったりもします。