個人的に好きな映画のジャンルはロードムービー。
ロードムービーとはいわゆる旅行記のようなもので、旅をしながらそこで起きた様々な出来事をテーマにした映画のこと。
なぜロードムービーが好きかといえば、やはり旅の中で束の間の自由を観客としても感じることができるからではないかなと思う。
特に開放的な夏の時期とロードムービーは相性もいいのではないだろうか。
というわけで、今回は夏休みに観たいおすすめのロードムービーを紹介!
夏休みに観たいおすすめロードムービー映画
図鑑に載ってない虫
三木聡節が炸裂する、脱力系ロードムービー
『図鑑に載ってない虫』は2007年に公開された三木聡監督、伊勢谷友介主演のコメディ映画。
一度死んでも生き返るという効能を持つ虫、「シニモドキ」を探して旅に出る物語。
主人公の売れないルポライターの「俺」役を伊勢谷友介、その友人のアンドーを松尾スズキが演じています。また『バベル』でブレイクする直前の菊地凛子も出演している。
今作の特徴は何と言っても三木聡らしい小ネタの数々とシュールなギャグのオンパレード!
脱力系とも称されるそのコメディセンスはちょうど暑くてだらけてしまいそうな夏の休日に観るにはぴったりの作品だと思う。
シニモドキを見つけるために仲間と旅をするその様子はまるで子供が夏休みに虫採りをしているかのよう。
大人の夏休みを感じさせる空気感で個人的にも大好きなおすすめ映画だ。
またナイス橋本の歌うエンディングテーマも夏の切なさが表現されており、こちらもおすすめ。
イントゥ・ザ・ワイルド
実話を元にした、どこまでも自由を求めた青年の人生
『イントゥ・ザ・ワイルド』は2007年に公開されたショーン・ペン監督主演の伝記映画。
優秀な成績で大学を卒業したクリストファー・マッキャンドレだったが、彼は両親の不和とそれにも関わらず、モノを与えることクリスを慰めようとする姿勢にクリスは反発し、大学を優秀な成績で卒業したにも関わらず彼は金銭はおろか、自分を証明するものもすべて捨て去り、アレキサンダー・スーパートランプと自称し、何もないアラスカの荒野を目指す。
旅の途中で様々な人々と出会い、別れを経験したクリス。「一度は何もないところで自然のままの暮らしを送るべきだ」そう考えていたクリスだったが、その果ての荒野でクリスが見つけた「幸せ」の答えとは何だったのだろうか。
果たしてクリスの生き方は純粋で勇気あるものだったのか、それとも向こう見ずな愚かな選択だったのか。
できれば社会に出る前の学生の方に観てもらいたい映画。
人生とは何か、さまざまな捉え方、感じ方ができる作品だと思う。
いろんなことに挑戦できる夏休みだからこそ、今一度人生の意味に目を向けてほしいとも思ったりする。人生に悩んでいる人にも観てほしい、本当におすすめの作品。
500ページの夢の束
ダコタ・ファニングの未だに驚くべき演技力
『500ページの夢の束』は2017年に公開されたベン・リューイン監督、ダコタ・ファニング主演のロードムービー。
スタートレックの熱狂的なファンである自閉症のウェンディ。彼女はグループホームで暮らしているのだが、、姉のオードリーが現れ、家を売ることにしたと話します。
ウェンディはスタートレックの脚本コンテストに応募し、その賞金で家を買い戻すと言いますが、オードリーは相手にしません。
脚本の郵送での締め切りが過ぎていたためにウェンディは施設を抜け出し、脚本を直接持ち込むためにハリウッドへ向かいます。
ダコタ・ファニングの演技力は今なお健在。自閉症のウェンディが一人で夢を抱いて外の世界へ立ち向かう、その勇気を思わず応援したくなります。
前に一歩踏み出そうと思わせてくれる、そんな作品です。
気狂いピエロ
ゴダールの代表作。鮮やかな色彩あふれるヌーヴェルヴァーグの名作
『気狂いピエロ』は1963年に公開されたジャン=リュック·ゴダール監督、ジャン=ポール・ベルモンド主演のフランス映画。
ゴダールの初期の名作です。ストーリーを追うよりもその色彩や解放感を感じてもらえたらと思います。ストーリーはおそらく原作であるライオネル・ホワイトの『obsession』を読まないと60年代のフランスと、ゴダールの初期のミューズでもあったアンナ・カリーナの美しさとファッション。
古い映画ですが、夏休みにはこれくらいの年代までさかのぼって映画を観てみるのもいいのではないでしょうか。
今ではジャン・ポール・ベルナンドもアンナ・カリーナもそして、ジャン=リュック・ゴダールも亡くなってしまいました。
フランスの名俳優の在りし日の輝きを堪能するものまた『気狂いピエロ』の楽しみ方のひとつかもしれません。
リトル・ミス・サンシャイン
どん底の家族が一つになる!2000年代を代表する傑作映画
『リトル・ミス・サンシャイン』は2005年に公開されたジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス夫妻監督、アビゲイル・ブレスリン主演のコメディ・ドラマ映画です。
自己啓発本で一発当てようとする父、ゲイで自殺未遂したばかりの叔父、ヘロイン中毒の祖父、ニーチェに影響され、パイロットになるまで無言の行を実行している兄。そしてそんな家族に振り回される母。末娘のオリーブが参加するミスコン、リトル・ミス・サンシャインの舞台であるカリフォルニアに向かって一台のボロワゴンに乗り込んで一家は旅をします。
旅が進むにつれて、家族は一つになっていく様がとても楽しく、また前向きな気持ちにさせてくれます。公開当時はわずかでの上映だった『リトル・ミス・サンシャイン』ですが、その後館にまで拡大されるとその人気のほどがうかがえるかと思います。
「負け犬っていうのは、負けるのが怖くて挑戦しないやつらのことだ」はこの映画のセリフの中でも有名な名セリフ。
コンテストを前に不安で涙するオリーブに祖父のエドウィンが掛けた言葉です。
その言葉を胸にコンテストに出場したオリーブ。彼女とフーヴァー家の絆が炸裂するクライマックスはまさに痛快!
少し落ち込んだ時やうまくいかない日々でも前を向こうという気持ちにさせてくれる、おすすめの映画です。
菊次郎の夏
北野武が実父の名を冠した、楽しくも切ないロードムービー
『菊次郎の夏』は1999年に公開された北野武監督・主演のドラマ映画です。ちなみにこの映画のために制作された久石譲のテーマ曲『Summer』はとても有名になり、今では映画を飛び越えて夏のスタンダードな一曲になっています。
小学生の正男は夏休みを利用して、離れた場所に住む母親を訪ねに行こうとしますが、近所のおばさんが自身の夫である菊次郎を保護者として正男に同行させます。
チンピラ中年である菊次郎は旅の資金をギャンブルで使い果たすなどメチャクチャな男なのですが、正男と菊次郎の旅はいつしか忘れられない思い出の旅になっていきます。
母親に会う場面がクライマックスではなく、その痛みを和らげるようにみんなで遊ぶ場面を多く入れるなど、映画全体が母親探しではなく、本当に大人までを含めた「夏の思い出づくり」を目指しているのではないかなと感じます。
個人的にもふとしたときに観たくなる、夏の名作映画ですね。
ありきたりな展開にせずに、それでいてノスタルジーも感じさせる作風はさすが北野武といったところでしょうか。ちなみにタイトルの菊次郎は北野武自身の父の名前でもあります。
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
海を見るために。死期が迫った患者の暴走
ロードムービーといえばこちらも外せません。
『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は1997年に公開されたトーマス・ヤーン監督、ティル・シュヴァイガー、ヤン・ヨーゼフ・リーファース主演のドイツ映画です。
死期が迫り余命幾ばくもないルディとマーチンは、天国では海の話題が流行っていると語ります。まだ海を見たことのない二人は病院を抜け出し、車を盗んで海へと向かいます。
出演者の中には『ブレードランナー』のロイ役で有名なルドガー・ハウアーも名を連ねています。
当時、出演にあたってルドガー・ハウアーのマネジメントは1日10万ドルのギャラを要求したと言いますが、ハウアー自身がそれを無視し、格安のキャラで出演しています。
ドイツは海に面した国ではあるものの、日本のように海に囲まれた国ではないために、場所によっては海を直に目にすることは容易ではありません。
そんな事情もあってこそ、この映画のストーリーは活きてきます。
2005年には長瀬智也主演で『ヘブンズ・ドア』として邦画リメイクされますが、周囲を海に囲まれている日本で海を目指してもなぁ…というのが正直な感想です。
グリーンブック
実話を元にした感動作だが賛否両論
『グリーンブック』は年に公開された監督、ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ主演のドラマ映画。天才的なピアニスト、ドン・シャーリーとその用心棒として雇われたトニー・ヴァレロンガの実話を元にしたロードムービーです。
舞台は1960年代のアメリカ。天才的なピアニストのドン・シャーリーはアメリカの中でも人種差別がまだまど根強いディープサウスを周るツアーを計画していました。しかし、黒人のドン・シャーリーにとってディープサウスへ赴くことは多大な危険のリスクが伴いました。
そこで運転手兼ボディガードとして、クラブの用心棒を務めた経験のあるトニーが雇われます。
最初は黒人であるドン・シャーリーに差別意識のあったトニーですが、シャーリーのピアニストとしての技量を目の当たりにし、そして交流を深めていくうちに大切な友人として扱うようになります。
旅が終わり、仲間と自宅で食卓を囲むトニーですが、仲間が「ニガーとの」「ニガーと言うな」と言います。そして、トニーの家にドン・シャーリーも姿を見せます。その時のトニーの笑顔と抱擁が全てでしょう。
『グリーンブック』に関しては白人が黒人を助ける「白人の救世主」ではないかとの批判もあります。ですが、個人的には何度観てもやはりホロリと感動させられる映画なのです。
道
フェリーニの代表作にして映画史に残る不朽の名作
最後に夏休みだからこそ、過去の名作も振り返っておきたいもの。『気狂いピエロ』に続いて、フェデリコ・フェリーニ監督の『道』もおすすめとして紹介しておきたいと思います。
『道』は1959年に公開されたフェデリコ・フェリーニ監督、アンソニー・クイン主演のドラマ映画。
暴力的で粗野なザンパノは働いているサーカスでアシスタントの女性が死んだため、その妹のジェルソミーナを新しいアシスタントとしてタダ同然で買い取ります。
ジェルソミーナは知能は人より劣っているものの、素直な心を持っていましたが、ザンパノはジェルソミーナをぞんざいに扱うばかり。
ある時、ザンパノは旧知の芸人、イル・マットと再開します。かねてから反りが合わないザンパノとイル・マットでしたが、イル・マットはジェルソミーナに優しく接します。
しかし、ザンパノとイル・マットの争いは次第にエスカレートしてしまい…。
フェリー二の代表作の一つでもあり、映画史に残る名作でもある『道』。
一人の粗野な男が人間性を取り戻すまでを描いた傑作です。古い映画ですが、観て損はないと言えるおすすめの作品です。