ベトナム戦争をテーマにしたおすすめ映画

今回はベトナム戦争をテーマにしたおすすめの映画を紹介します。

ベトナム戦争は一切のメディア規制が敷かれなかった戦争で、誰もが戦場の悲惨な状況をテレビで知ることが出来ました。

そんな中、アメリカではベトナム戦争への反対の声が日増しに高くなっていきます。

そしてアメリカはベトナムから撤退。

「アメリカが負けた戦争」になったことも有名です。

ディア・ハンター

ベトナム戦争映画の金字塔。ベトナム戦争を否定的に描いた初めての映画

『ディア・ハンター』は1978年に公開されたマイケル・チミノ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の戦争映画です。

原作は 『the man who comes play』という脚本。もともとはロシアン・ルーレットをするためにラスベガスへ向かう人々を書いたものでしたが、今回物語の舞台はラスベガスからベトナムへと変更されています。

鹿狩りを楽しむピッツバーグの幼馴染の3人がベトナム戦争に参加したことでそれぞれの人生が大きく変わっていきます。

戦争の狂気をこれでもかと見せつける本作。

ベトナム戦争はメディアも入り、テレビの中で本当の戦争が放送された、初めての戦争でもありました。それを機にベトナム戦争への反対運動も若者を中心に広がっていくのですが、この作品も厭戦的な雰囲気を漂わせる作品となっています。『ディア・ハンター』は初めてベトナム戦争を否定的に描いた映画だとも言われていますね。

あれほど鹿狩りに興じていたニックが、ベトナムから復員した後はどうしても引き金が引けない人間になっているなど、「命を奪うことの本当の重さ」を描いた作品でもあります。

戦争の狂気や悲劇的かつ衝撃的なラスト。強烈なインパクトを残す映画です。

ベトナム戦争を描いた映画の中でも傑作とされています。

余談ですが、一方ではベトナム兵をあまりに残虐に描きすぎだという抗議の声もあったり、時代考証的にロシアンルーレットは当時のベトナムには無いなどの声もあります。そもそもの原作は舞台がベトナム戦争ではなかったので仕方の無い部分ではあるのですが。

それでもこの映画の一度観たら忘れられない凄まじさは中々言葉では言い表せません。戦争の狂気、空虚さ、そしてもはや命を賭けることでしか生きる実感を得られなくなってしまったこと。

ちなみに『ディア・ハンター』はメリル・ストリープの映画デビュー作品でもあります。

7月4日に生まれて

ベトナム従軍経験者のオリバー・ストーンが映し出すベトナム戦争のリアル

『7月4日に生まれて』は1992年に公開されたオリバー・ストーン監督、トム・クルーズ主演のドラマ映画です。

こちらもベトナム戦争によって人生が変わった男の話です。実在の反戦活動家、ロン・コーヴィックの半生を映画化しています。

ロンは愛国心からベトナム戦争への参加を決意しますが、ベトナムで彼を待っていたのはさらにはパニックを起こしてウィルソンを誤射し殺してしまいます。

その事を上官に報告するも軽くあしらわれ、ロンはやり場の無い気持ちを抱えます。

復員したロンは命を懸けて戦った帰還兵が国民から嫌われていること、そして政府がベトナムについて喧伝していたことと、実際の戦場との違いに打ちのめされます。

子供の頃のロンにとって、帰還した軍人はヒーローでしたが、いざ自分がその立場になってみるとそれは憧れとは程遠い遠いものでした。

自らも従軍経験を持つオリバー・ストーンがロン・コーヴィックの原作を映画化した本作はストーンの映画に一貫して流れるアメリカへの疑問や批判が強く込められた作品となっています。ちなみに本作の脚本にもロン・コーヴィックは参加しています。

実際にベトナム戦争を体験したオリバー・ストーンだからでしょうか、初めて観た時はまさか90年代に作られたとは思えないリアルさが印象的でした。

本作は基本的には反戦映画だと思うのですが、そこに留まらない強いメッセージ性を帯びた作品です。

ちなみにタイトルの7月4日とはアメリカの独立記念日でもあります。

ランボー

ベトナム帰還兵の悲しみを描いたスタローンの代表作

『ランボー』は1982年に公開されたテッド・コッチェフ監督、シルヴェスター・スタローン主演のアクション映画です。

原作はディヴィッド・マレルの処女出版小説『一人だけの軍隊』。

こちらは反戦的なスタンスではなく、ベトナム戦争の帰還兵の苦悩を描いています。

主人公のジョン・ランボーは戦友の死をその家族に伝えにいきます。

その帰りに立ち寄った街でランボーは保保安官のディーズルから浮浪者扱いされ、保安官から拷問をうけたことで、ベトナム受けた拷問の記憶がフラッシュバックします。

思わず保安官等に暴行を働いたランボーは山へと逃げ込みます。

ディーズルらは山狩りのようにランボーを捕らえようとしますが、上官であったトラウトマンはランボーの経歴を語り、ランボーがいかに優秀な兵士であるのか、そしてゲリラ戦法に秀でたランボーを倒そうとするのがどれ程無謀なことなのかを保安官に説明します。しかし保安官は聞く耳を持ちません。

やがてランボーは市街地に乗り込み、さらなる戦いを展開しようとしますが、ランボーの潜伏した建物は銃を持った多くの警官に包囲されていました。

トラウトマンはランボーに圧倒的に不利な状況を伝え、これ以上戦うと殺されると投降を勧めます。

しかし、ランボーはこのようにトラウトマンに叫びます。

「何も終わっちゃいないんだ!俺にとって戦争は続いたままなんだ
あんたに頼まれて必死で戦ったが勝てなかった
そして帰国したら空港で非難轟々だ
赤ん坊殺しとか悪口の限りを並べやがった!
あいつらは何だ?戦争も知らずに!頭に来たぜ!
俺は世間者じゃのけ者なんだ。
戦場には仁義があってお互い助け合った。戦場じゃ100万ドルの兵器を任せてくれた。
でもここでは駐車係の口もない!惨めだよ。どうなってるんだ?みんなどこだ?」

泣きながらこの言葉を語るランボー。

そこには数多の英雄的な活躍を行いながらも、それが戦争の現実ではないことを強く感じさせます。

『ランボー』と言えば、スタローンが最強の男として暴れまわるイメージかもしれませんが、本当のランボーは戦争のトラウマを抱え、悲しみを宿した優しく弱い男なのです。

ベトナムで戦ったものにも勇気と正義があった。

反戦運動の中で「悪」とされてしまいがちなベトナム帰還兵の心情を代弁したかのような本作。先に紹介した『7月4日に生まれて』もやはり傑作だと思います。本当におすすめできる名作映画です。

フルメタル・ジャケット

R・リー・アーメイの狂気溢れる怪作

『フルメタル・ジャケット』は1987年に公開されたスタンリー・キューブリック監督、 マシュー・モディーン主演の戦争映画です。

なんといってもこの映画はR・リー・アーメイ演じるハートマン軍曹の罵詈雑言の名セリフの数々を抜きに語ることはできません。

この『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹による新兵しごきの場面は多くのパロディが作られ、ネットミーム化するほど有名なものですが、当初の日本語字幕ではその言葉のニュアンスがキレイ目に翻訳されてしまったことから没になったという逸話もあるほど。

アーメイ自身も元海兵隊員であり、ベトナム戦争にも従軍、また指導教官を務めた経験もありました。そのために、元々ははアドバイザーとして『フルメタル・ジャケット』に招聘されたアーメイですが、その罵詈雑言のあまりの迫力から自ら映画に出演することになったという経緯があります。

スタンリー・キューブリックらしく、淡々と戦争の狂気を見せていく今作は他の戦争映画とは一線を画しています。

プラトーン

オリバー・ストーンによるベトナム三部作の一作目

『プラトーン』は1986年に公開されたアメリカ映画。監督はオリバー・ストーン、主演はチャーリー・シーンが務めています。

自らもベトナム戦争へ参戦しているオリバー・ストーンが初めてベトナム戦争をテーマに作り上げた作品です。

ベトナム戦争の現実をリアルに映し出し、戦場の中で兵士が疲弊し、正義や人間性がなくなっていく残酷さはオリバー・ストーンの実体験に基づいています。

戦争の鬼となって無抵抗の市民の殺害も厭わないバーンズと、その対極にいるエリアス。この二人の上官の間で主人公のクリスは軍隊とは何か、戦争とは何かを身をもって経験していきます。

監督のオリバー・ストーンもクリス同様、父親への反発心からベトナム戦争に身を投じた過去があります。

『プラトーン』に登場するバーンズもエリアスも従軍中に実在した人物をそれぞれモデルにしています。

また、この作品で描かれる同士討ちや民間人への虐待、放火、軍隊内で広がる麻薬などの描写もすべてオリバー・ストーンの実体験をもとにしています。

予算は600万ドルと決して多くはない作品でしたが、公開されると予算の20倍を叩き出す大ヒットとなりました。

まだ『プラトーン』には無名俳優だったジョニー・デップも出演しています。

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。