『ダイ・ハード/ラスト・デイ』どうしてこんなにつまらない?!死なない男、ジョン・マクレーンにトドメを刺した駄作

概要

『ダイ・ハード/ラスト・デイ』は2008年に公開されたジョン・ムーア監督、ブルース・ウィリス主演のアクション映画。

あらすじ・ストーリー

『ダイ・ハード4.0』で娘との絆を取り戻したジョン・マクレーンだったが、息子のジャックとは疎遠で、その居場所すらわからなくなっていた。

ある時マクレーンの元にジャックが殺人罪で逮捕されたという情報が入る。ジャックのいる場所はモスクワ。

マクレーンはジャックの裁判に出廷するために飛行機でモスクワに向かう。

しかし、裁判所は突如何者かによって爆破される。マクレーンは裁判所から逃げ出してきたジャックと再会するが、なぜか、ジャックはマクレーンを無視して政治犯のコマロフを連れて車で逃走する。

実はジャックの正体はCIAのスパイであり、コマロフの救出と護衛がジャックの任務であったのだ。

コマロフはかってロシアの大物政治家のチャガーリンと共謀し、濃縮ウランを利用した軍事兵器を開発していたが、コマロフはチャガーリンの裏切りに遭い、投獄されてしまう。チャガーリンの有罪の証拠となるファイルを持つコマロフはチャガーリンに命を狙われていた。

ファイルと引き換えにアメリカへの亡命を求めていたコマロフは、娘のイリーナの同行も求めるが、イリーナはコマロフを裏切り、チャガーリンの部下とともにコマロフを拉致して逃亡する。

マクレーンとはジャックはコマロフのファイルの在り処であるチェルノブイリへと向かう。

感想・解設

2007年に公開された『ダイ・ハード4.0』はシリーズの中でも屈指の名作だった。『ダイ・ハード3』から10年以上経っての新作だったが、ブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーンのキャラクターの深堀りや、当時の時代性などもうまく織り込み、映画の始まりからノンストップで楽しませてくれるエンターテインメントアクション作品だった。

『ダイ・ハード4.0』の特典映像に収録されているブルース・ウィリスのインタビューを観ると、『ダイ・ハード2』と『ダイ・ハード3』の失敗を分析し、『ダイ・ハード』への原点回帰を意識した作品だという。

私も『ダイ・ハード4.0』は大好きな作品で、シリーズの息を吹き返させた作品だと思っている。

なので、それに続く作品はどれだけの傑作になるかと楽しみにしていたのだが、『ダイ・ハード/ラストデイ』は『ダイ・ハード』シリーズを目茶苦茶にしてしまったような、言葉を選ばずに言えば駄作だった。

『ダイ・ハード4.0』はマクレーンの不器用さを前面に出した作品だった。ボヤきながら、それでも娘のために命がけで悪の組織に立ち向かう姿は『ダイ・ハード』や『ダイ・ハード2』で妻を救うために戦った姿を思わせた。

決してスーパーヒーローではない、普通の男が愛するものを救うために、置かれた状況の中でベストを尽くすのがジョン・マクレーンという男の魅力なのだと思う。だからこそ、私達は『ダイ・ハード』シリーズに共感したのではないか。

『ダイ・ハード3』からはバディものとしての魅力も作品に加わっているが(厳密に言えば『ダイ・ハード』もそうだ)、いずれの作品もマクレーンとはタイプの違う人物を相棒役に充てている。それでこそマクレーンのキャラクターが引き立つというのに、『ダイ・ハード/ラストデイ』では似たようなキャラクターの息子を相棒役に置いてしまった。

しかも守るべき家族も今回はなし。別に事件に巻き込まれる不運な男という要素だけが『ダイ・ハード』シリーズの必須要素ではない。むしろそのようなアクション映画ならば『ダイ・ハード』シリーズ以外にもたくさんあるわけで、そちらのほうが面白い作品も見つかるかもしれない。

それに加えて脚本もあらが目立つ。

全てを言わないが、とんでもない確率の偶然が起き過ぎていたり、放射能を中和するガスの存在など、リアリティを無視したストーリーテリングや小道具が目立つ。

事実上、このような作品が名シリーズに終止符を打ってしまったことは返す返すも残念だ。

評価・レビュー

24点

正直なところ、派手なアクションくらいしか観るべきところのない作品だ。そのアクションにしたって、あまり独自性は感じられないのだが。

2022年にブルース・ウィリスが俳優業の引退を宣言したために、もう『ダイ・ハード』シリーズの復活は絶望的になった。

できれば『ロッキー・ザ・ファイナル』のような華麗な復活劇を期待したかったのだが。最終作がこの様になってしまって残念だ。

作品情報・キャスト・スタッフ

2013年製作/98分/アメリカ・イギリス・ハンガリー

監督
ジョン・ムーア

脚本
スキップ・ウッズ

主演
ブルース・ウィリス
ジェイ・コートニー
セバスチャン・コッホ
ラシャ・ブコヴィッチ
コール・ハウザー
ユーリヤ・スニギル

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。