概要
『アラジン』は2019年のミュージカル映画。監督はガイ・リッチー、主演はウィル・スミス、メナ・マスードが務めている。
1992年に公開されたディズニーのアニメ映画『アラジン』の実写作品となる。
あらすじ・ストーリー
感想・解説
多くの予算をかけて制作された映画はもはや芸術というよりは失敗することを許されない「商品」なのだ。今作『アラジン』を観るとそのことがふと頭をよぎった。
『アラジン』は公開当時に劇場で観ている。今回改めてソフトで観返してみた。エンターテインメント性、メッセージ性、すべてがほとんど完璧な作品と言ってもいいかもしれない。
ジャスミンがアニメ版と比べてはるかに自立志向の女性になっているのも現代的であるし、権力にまかせて好き勝手し、法を無視しようとするジャファーにはワインスタインに始まるセクハラ問題を連想させる。ハーヴェイ・ワインスタインは映画界における絶大な権力を盾に様々な問題を引き起こした。
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』や『オーシャンズ8』がもつ、健全なメッセージを『アラジン』もまた発信している。それは女性の権利と多様性の称賛だ。
映画の内容自体もサスペンス、コメディ、アクション、ダンス、恋愛など 様々なテンポ、カラーで構成されており、飽きさせることがない。
多様性ということでは登場する俳優たちのルーツもまた多様である。主演のメナ・マスードはエジプト人の両親をルーツに持つ。ヒロインのジャスミンを演じたナオミ・スコットはロンドン出身だが、ウガンダ出身のインド系移民である母を持つ。黒人のウィル・スミスは言うまでもない。
また原作にはなかった女性同士の世界に強くフォーカスをあてているのも特筆しておきたい。概ね本編は原作通りなのだが、新しいキャラクターとしてナシム・ペドラドが演じる侍女のダリアが登場している。
ジャスミンを演じたナオミ・スコットはダリアのキャラクターについて「ダリアはこの映画でジャスミン姫以外で唯一の女性だから、とても重要なキャラクター。ダリアは侍女かもしれないけれど、ジャスミン姫とは親友同士。一緒に育ってきたからその絆はとても強いの。だから、映画を見る人には、ジャスミンとダリアの関係を見て、『私もこんな友人がほしい』とか『私たちもあの状況になったらああする』と思ってほしい。アニメには(女性同士の友情が)描かれていなかったから」と述べている。このように全方位に失礼の無いように作り上げられたのがよくわかる。数百億をかけて製作されたのだから当然と言えば当然だ。
ただ、それがある意味ではつまらなく感じてしまうのも事実だ。言ってしまえば優等生すぎるとでも言おうか。そこでアクセントとなるのはウィル・スミスだ。
ディズニーのアニメーションが原作であることから、ミュージカル的な演出も多いのだが、ウィル・スミスの芸達者ぶりには驚かされる。『アラジン』ではウィル・スミスのコメディ・センスが遺憾なく発揮されている。
主演映画のPRでたびたび日本のバラエティ番組に出演していたウィル・スミスはどの主演映画の中のキャラクターよりも陽気で楽しいキャラクターだった。今作ではそんなウィル・スミスのキャラクターが楽しめる。意外とここまでコメディに振り切ったウィル・スミスの作品はそう多くはない。
前述の通り優等生な作りの映画だが、多くの人は期待通りに充分楽しめるだろう。
評価・レビュー
90点
アニメの実写化作品の中でもかなり成功したと言える出来栄えだろう。
作品情報・キャスト・スタッフ
2019年製作/ 128分/アメリカ
監督
ガイ・リッチー
脚本
ジョン・オーガスト
主演
ウィル・スミス
メナ・マスード
ナオミ・スコット
マーワン・ケンザリ
ナヴィド・ネガーバン
ナシム・ペドラド
ビリー・マグヌッセン