『アルマゲドン』科学考証無視で感情に訴える「泣きパニ」超大作

概要

『アルマゲドン』は1998年に公開されたマイケル・ベイ監督、ブルース・ウィリス主演のパニック映画。

あらすじ・ストーリー

流星雨によってスペースシャトルが破壊される事件が発生した。

その流星雨は隕石となってニューヨークに襲いかかる。

そして、民間人からの報告と、NASAの調査によって地球にはテキサス州ほどの大きさの小惑星が迫っていることが判明。しかも地球に衝突するまでの時間はわずか18日。

NASAは小惑星に深い穴を掘り、その中に投下した核弾頭で小惑星を2つに割る計画を立てていた。

そこで白羽の矢が立ったのが穴掘りのプロである石油採掘作業者のハリー・スタンパーとその仲間たちだった。

屈強だが、一癖も二癖もある彼らは人類の存続をかけて宇宙へと飛び立っていく。

感想・解説

地球を滅ぼすほどの巨大隕石が迫ってきているー。この設定は『アルマゲドン』ほわずか2ヶ月前に公開された『ディープ・インパクト』と全く同じだ。まぁこの2本の映画は同じ一つの企画から生まれているので無理ないことだが。

それでも『ディープ・インパクト』の国内興行収入80億円に対して、後発である『アルマゲドン』は130億円もの数字を叩き出した。

言っておくが、『ディープ・インパクト』の製作総指揮にはスティーブン・スピルバーグが名を連ねている。

なぜ『アルマゲドン』は後発ながら『ディープ・インパクト』に勝てたのだろうか。

リアリティの面から言うと『アルマゲドン』は壊滅的だ。赤点レベルの作品なのだ。

一応『アルマゲドン』の製作にはNASAの協力もあったのだが、当のNASAでは『アルマゲドン』を間違い探しの教材として使用しているという噂もあるくらい、リアリティには乏しい。

一例を挙げると、テキサス州レベルの小惑星でありながら、地球と何ら変わらない重力であることや、酸素がない宇宙空間なのに炎が上がること、そもそも映画のように217メートル掘ったとしても小惑星を二つに割るにはとても足りないということも挙げられる。

そもそも根本的な話をするならば、映画のように石油採掘業者を宇宙飛行士に訓練するより、宇宙飛行士に石油採掘技術を学ばせたほうが早いということだ。ちなみにA.J・フロスト役を演じたベン・アフレックが同様の疑問を監督のマイケル・ベイにぶつけたところ、「黙れ」という返事をもらったそうだ。

本作はリアリティよりも登場人物のキャラクターを掘り下げた作品で、論理的な側面よりも感情に訴える作品となった。

ブルース・ウィリス演じるハリー・スタンパーの不器用な頑固親父というキャラクターは、『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンにも通じる。

クライマックスの場面で、そんな親父の娘やその恋人であるA.Jに心の内ではどのような思いを抱いていたか伝える場面はたしかに論理を抜きにして胸が熱くなる場面だ。

マイケル・ベイはどちらかというとエンターテインメントに振り切った作風で、論理的な整合性などあまり気にしないタイプの監督ではあるが、『アルマゲドン』で強調された感動要素は日本人の感性に見事に合致したと言えるだろう。

余談だが、かく言う私も初めて買った洋楽のCDは今作のテーマソングである、エアロスミスの『ミス・ア・シング』だった。ツッコミどころはたしかに多いが、それすら気にさせない魅力も確かにあるのだ。

あと、観光客役として松田聖子が一瞬出演しているのは本当の余談。

評価・レビュー

81

点数には本当に悩んだ。批判しようと思えばいくらでも批判し、ダメ出しできる作品だが、公開当時映画館で観て確かに感動したのも事実なのだ。

ちなみに本作のヒロインを務めたリヴ・タイラーはエアロスミスのボーカル、スティーヴン・タイラーの実の娘でもあり、『ミス・ア・シング』のMVでは画面越しという形ながら親子共演も果たしている。

作品情報・キャスト・スタッフ

1998年製作/150分/アメリカ

監督
マイケル・ベイ

脚本
ジョナサン・ヘンズリー
J・J・エイブラムス

主演
ブルース・ウィリス
ベン・アフレック
リヴ・タイラー

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。