『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』キャラクターと相反する優等生な映画

概要

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』は2006年に公開された。監督はキャシー・ヤン、主演はマーゴット・ロビーが務めている。
原作はチャック・ディクソンとゲイリー・フランクのコミック『バーズ・オブ・プレイ』。

あらすじ・ストーリー

ジョーカーと破局したハーレイ・クインはジョーカーという後ろ楯が無くなったことから街中の悪党や警察から命を狙われることになる。

ついにゴッサムシティの大物マフィアのブラックマスクにまで狙われるようになってしまったハーレイ・クインだが、ブラックマスクの欲しがっていたバーティネリ家のダイヤを持ってくる見返りとして自分を見逃してほしいと取引する。

感想・解説

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』は2016年の映画『スーサイド・スクワッド』のスピンオフ作品だ。
主人公はマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クイン。彼女がジョーカーと別れてからの活躍を描いている。

緊急事態宣言が明けて、それまでずっと家にいたことの反動もあり、映画館に向かったわけだが、とりあえずのリハビリのような感覚で選んだのがこの作品だ。
ハーレイ・クインという言わば「悪役」を主人公にしたアンチヒーローをテーマにした映画でもあるが、その中身は非常に優等生なものだった。

2016年、ハーヴェイ・ワインスタインの逮捕をきっかけに女性を中心に「#Metoo」運動が巻き起こった。セクハラや性差別を是正しようという動きだ。2017年の映画『ゲティ家の身代金』においてミシェル・ウィリアムズのギャラが、主演のマーク・ウォールバーグの1000分の1以下だったこともハリウッドの俳優の間でも男女の待遇に明らかな差別があることがニュースになった。
また、人種の問題もアメリカには根強い。2020年に起きたのジョージ・フロイド殺害事件で全米中に広がった「Black Lives Matter」運動も改めて人種差別が根強くアメリカに存在していることを世界に知らしめた。
また、2014年・2015年のゴールデングローブ賞は受賞者を白人俳優が多く占めたことも話題になった(これには人種差別とは別の意見もあり、黒人俳優であるジェイミー・フォックスは「もっといい演技をしよう」と述べている)。
アカデミー賞では「主要な役にアジア人や黒人、ヒスパニック系などの人種または民族的少数派の俳優を起用すること」や、「制作スタッフの重要なポジションに女性やLGBTQ、障がい者が就くこと」という規定が設けられた。

これらの流れを受けて明らかにハリウッド映画は変わった。『オーシャンズ11』、『ゴースト・バスターズ』など、名作のリメイクはメインキャストが女性に変更になった。『ターミネーター』シリーズの新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』なども女性が主人公になった。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』ももちろんその流れにある作品だ。

評価・レビュー

72点

感想の中でも述べたが、本来悪役であるはずのハーレイ・クインが全然悪に見えず、むしろティーンの女子のようにすら見えてしまう。軽いエンターテインメントとして観る分には楽しめる作品だと思うが、いろんな方面に気を遣って製作されているのが、あまりに透けて見えているようにも感じる。

作品情報・キャスト・スタッフ

2020年製作/109分/アメリカ

監督
キャシー・ヤン

脚本
クリスティーナ・ホドソン

主演
マーゴット・ロビー
メアリー・エリザベス・ウィンステッド
ジャーニー・スモレット=ベル
ロージー・ペレス
エラ・ジェイ・バスコ
クリス・メッシーナ
アリ・ウォン
ユアン・マクレガー

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