『キャロル』

概要

『キャロル』は2015年に公開されたトッド・ヘインズ監督、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ主演のドラマ映画。

あらすじ・ストーリー

1950年代のニューヨーク。デパートに子供へのクリスマス用のプレゼントを買いに来たキャロルは、その売り場で働く若い女性のテレーズと運命的な出会いを果たす。

感想・解説

名作というのはこのような作品のことを言うのだろう。テーマ性、演技力、演出、その全てが非常に高いレベルで一つの映画を織り成している。

原作はパトリシア・ハイスミスの『よろこびの代償』。本作は同性愛が禁じられた、1950年代のアメリカを舞台にした、二人の女性の恋愛を描いた作品だ。

パトリシア・ハイスミスといえば、アラン・ドロン主演の映画『太陽がいっぱい』の原作である『リプリー』の作者として知られているが、私生活では同性愛者であったことでも有名だ。

『よろこびの代償』はハイスミスが自らの恋愛経験を元に著した小説だが、今とは違い『よろこびの代償』を書いた1952年は同性愛は病気であり、治療すべきものという考えられていた。そのために『よろこびの代償』はクレア・モーガンという偽名で出版された。

ハイスミスが『よろこびの代償』の作者だと公に明かしたのはおよそ30年後、1980年代になってからだ。

『キャロル』の主人公であるキャロルとテレーズもまた、時代の抑圧に対して自分らしさを貫こうとする。その厳しさと純粋さを丁寧に、ロマンティックに描いている。

『キャロル』には映画全体から漂う、独特の緊張感と細やかさを感じる。もちろん禁じられた恋というテーマもあるのだろうが、昨今の不倫モノの作品にあるような「禁じられているからこそ燃える」という粗野な恋愛ではない。ただひたすらに純愛といっていい。

1950年代当時の同性愛小説はほぼポルノ小説として出版されていたというが、その中にあってパトリシア・ハイスミスの『よろこびの代償』は数少ない純愛小説だった。

二人の愛はどうなるのか。ラストシーンも実に見事だ。

評価・レビュー

95

テーマ性もさることながら、画作りも最高峰の作品ではないかと思っている。

実力派のキャストを揃えた本作では役者の演技力も恐ろしく高いもので、それが本作の格をさらに上質なものにしている。

恋愛映画の傑作と言ってもいい。ほとんど文句のつけようがない数少ない作品の一つだ。

作品情報・キャスト・スタッフ

2015年製作/118分/アメリカ・イギリス

監督
トッド・ヘインズ

脚本
フィリス・ナジー

主演
ケイト・ブランシェット
ルーニー・マーラ
サラ・ポールソン
カイル・チャンドラー

>CINEMA OVERDRIVE

CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。