概要
『キャリー』は1976年に公開されたブライアン・デ・パルマ監督、シシー・スペイセク主演のホラー映画。原作はスティーブン・キングの同名小説。
あらすじ・ストーリー
ベイツハイスクールに通う女子高生のキャリーは気弱な性格でいつもクラスメイトのからかいやイジメの対象になっていた。
ある時、体育後のシャワールームでキャリーは初潮を経験する。しかし、生理などについて何も教えられていなかったキャリーはパニックになってしまう。
クラスメイトはそんなキャリーを見て囃したてるが、体育教師のコリンズの介入によってその場は収まり、キャリーは学校を早退することに。
キャリーは自宅に帰るが、そこでキャリーの初潮を知った母親がキャリーを激しく叱咤する。厳格にキリスト教を信奉する母親からすれば、キャリーが肉体的に女になっていくことは耐えられないことでもあった(ちなみにキャリーがいじめられるようになったきっかけとして、母親が「自分とキャリー以外はすごく2落ちる」と言いながら近所の人々に寄付を迫ったからというのが小説版で明かされている)。
その後、クラスメイトたちはキャリーをいじめた罰として居残りで体育の授業を受ける。
クラスメイトの一人であるスーは素直に自分の行いを反省し、恋人のトミーにキャリーをプロムに誘うように頼む。
一方のクリスは居残り授業から抜け出し、キャリーを逆恨みして恋人のビリーとともにある計画を立てていた。
感想・解説
『キャリー』という映画を知ったのは12歳の頃。衛星放送か何かで作品のダイジェストが流れていて、かの有名な豚の血がキャリーの頭上に降りかかるシーンが強烈なインパクトだった。
だが、実際に『キャリー』を観て思うのは、ホラー映画というよりも、青春映画に近いのではないか?ということだ。
孤独で気弱な苛められっ子の女の子が、男の子と初めてのプロムパーティーへ行く。手作りのドレスを着てだ。
最初は不安で怯えていた女の子も次第に明るさを取り戻し、やがて二人はパーティーのベストカップルに選ばれる。
この部分だけ見ると、青春ラブコメと言っても不自然ではない。
だが、次の瞬間、ベストカップルに選ばれたキャリーの頭上には豚の血が降り注ぐ。ショックと悲しみとに打ちひしがれたキャリーは感情を爆発させ、超能力でパーティー会場にいた人々全員を惨殺していく。この場面では画面の分割などブライアン・デ・パルマらしい演出が冴えている。
本作でキャリーを演じたシシー・スペイセクはその年のアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされている。
『キャリー』は2013年にクロエ・グレース・モレッツ主演でリメイクされているが、やはりオリジナルのシシー・スペイセクの方が断然に怖い。
クロエ・グレース・モレッツだと華やかで美人すぎるのだ。こう言うと申し訳ないが、シシー・スペイセクは目の覚めるような美人ではない。そしてどこか虚ろで幸薄そうな雰囲気を漂わせている。
例えるならば『シャイニング』のシェリー・デュヴァルのような怖さだ。
ホラー映画として『キャリー』を評せば、決して怖い作品ではない、グロテスクな描写もほぼなければ、観ている私達を驚かせてびっくりさせるような演出もほぼない。
だが、今作にはそれらとは違う怖さがある。ブライアン・デ・パルマにとっても初のヒット作となった『キャリー』だが、そのためのシシー・スペイセクの本作に対する貢献は計り知れない。
評価・レビュー
79点
学校でのイジメ、家に帰れば狂信的な母親との暮らし、追い詰められた少女が唯一見つけた安らぎさえも豚の血によって洗い流されていく。
この映画、果たして本当に恐ろしいのはキャリーなのだろうか?
作品情報・キャスト・スタッフ
1976年製作/98分/アメリカ
監督
ブライアン・デ・パルマ
脚本
ローレンス・D・コーエン
主演
シシー・スペイセク
パイパー・ローリー
ベティ・バックリー
ウィリアム・カット
ジョン・トラボルタ
ナンシー・アレン
エイミー・アーヴィング
P・J・ソールズ
シドニー・ラシック
マイケル・タルボット