概要
『コンビニエンス・ストーリー』は2022年に公開された三木聡監督、成田凌主演のコメディ映画。
あらすじ・ストーリー
脚本家の加藤は恋人で女優志望の女であるジグザグと暮らしている。ある日加藤ざコンビニでジグザグの愛犬のケルベロスためにドッグフードを買い物していると、そこに車が突っ込んでくる。
当然無傷ではいられないほどの事故にも関わらず、加藤は何事もないようにそのまま家に帰る。家に帰ると脚本を書いていたPCの上にケルベロスが座っており、そのせいで書きかけの脚本はすべて消えてしまっていた。
加藤は怒りのままにジグザグに内緒でケルベロスを捨てることにする。ケルベロスが餌に夢中になっている間にまた加藤は速くその場を離れようとする。しかし、そのせいで焦って車で地蔵を一体倒してしまう。
その後、家に戻った加藤はケルベロスがいなくなったことをジグザグに尋ねられる。気まずくなった加藤はケルベロスを捨てた場所へ再び向かう。
そこにはただポツンと古びたコンビニの「リソーマート」があるだけだ。
加藤はコンビニ店員の恵子と、その夫である店主の南雲と知り合う。乗ってきたはずの車もなぜか消えており、帰ることもできなくなった加藤は南雲の厚意で南雲の家に泊まることになる。
しかし、南雲の家で過ごすうちに人妻の恵子は次第に加藤を誘惑するようになり、加藤は恵子と禁断の関係になってしまう。
感想・解説
三木聡には2つの面があると思う。一つは脱力系コメディーの代表的作家の顔、もう一つはシュールで不条理なダークストーリーの語り手としての顔だ。その2つが完全に分離することなく、だが作品によってはほぼダークストーリーの方が全面に出ているものもある。
特に近年の三木聡の作品にはそれが顕著だ。2011年のドラマ『熱海の捜査官』、2012年の映画『俺俺』、2017年の『音量を上げろタコ!何歌ってんのか全然わかんねぇんだよ』もそうだった。
個人的には『俺俺』も『音量を上げろタコ』も三木聡のファンとしてはそれなりに楽しめたのだが、世間の「つまらない」「ひどい」という声にもうなずけた。
それはなぜか。作品が脱力系コメディから急にダークストーリーへ舵を切ってしまうからだ。それまで楽しんでみていた作品のカラーが急にシリアスに変わってしまい、ついていけなかったのだ。
そういった意味では今回の『コンビニエンス・ストーリー』は終始シリアスな場面が続く。そして全てにおいて不条理なのだ。
内容としては『熱海の捜査官』に通じる部分がある。
幾度か考察を試みても、どうしてもパズルのピースが合わない。
それもそのはず、そもそも『コンビニエンス・ストーリー』はパズルが完成しないように作られているからだ。
いかにも考察を誘うような作りにはなっているものの、解らしい解は用意されていない。つまり、正解のない映画なのだ。
三木聡監督は何が正解かは観客に任せているという。
「この映画を『体験』してほしい」
「正解とかいうことではなく、映画館の中で感じながら観てもらえたらすごい嬉しいなと思いますね。体験として。変な体験を映画館でする、ってことだと思うんですね」
そう、『コンビニエンス・ストーリー』は難解さ、わからなさまで含めて「体験」を求める映画だったのだ。
そのことをわかっているかどうかで、この作品の評価も正反対に変わってくるだろう。
評価・レビュー
47点
これを読む人が三木聡監督のファンなら70点にしていいが、そうではないほとんどの人からは「わけがわからない」「意味がわからない」という感想になってしまうだろう。だからここはあえて低い点数をつけている。
ストリーミング・サービス全盛の今のこの時代だが、映画館でしか感じることのできない作品は必ずある。『コンビニエンス・ストーリー』もそうかも知れない。
誰かと観て、感想や予想を話し合う。それも立派な映画体験だ。
作品情報・キャスト・スタッフ
2022年製作/97分/日本
監督
三木聡
脚本
三木聡
主演
成田凌
前田敦子
片山友希
岩松了
渋川清彦
ふせえり
松浦祐也
BIGZAM
藤間爽子
小田ゆりえ
影山徹
シャラ ラジマ
六角精児