『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』観て損はなし!「オトナ帝国」の並ぶクレしん映画の名作

概要

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』は2002年に公開された原恵一監督のアニメ映画。声の出演は矢島晶子らが務めている。監督の原恵一は前作『オトナ帝国の逆襲』に引き続いての続投となっている。

あらすじ・ストーリー

あの日、野原家は一家全員が同じ夢をみるという体験をする。

その日、しんのすけが幼稚園から帰ると、シロが一心不乱に庭を掘り返していた。そこにはしんのすけ自身の字と思しき手紙が入っていた。

埋めた覚えはないと不思議に思うしんのすけだったが、手紙の中の「おひめさまはちょーびじん」という一文に今朝の夢を思い出し、目を閉じる。

しんのすけが目を覚ますと、そこは夢で見た景色の中だった。しんのすけは歩く間に戦の真っ只中に遭遇してしまう。そう、しんのすけは戦国時代にタイムスリップしてしまったのだ。

感想・解説

前作『オトナ帝国の逆襲』はクレヨンしんちゃんの映画作品の中でも別格の評価と人気を誇る作品だが、今作『戦国大合戦』もまた『オトナ帝国』に負けずとも劣らない人気の高い作品だ。

『クレヨンしんちゃん』という作品からは想像もつかないほどきっちり丁寧に戦国の暮らしが描かれている(余談だが、日本の歴史の中で戦国時代という時代は存在しない。室町時代から、安土桃山時代にかけての戦乱の時代をそう呼称しているに過ぎない)。

生活の描写も丁寧で、合戦の前には田を刈るなど、他の時代劇映画では中々見られない細かいところまで時代考証はしっかり行われている。

そういうところも含めて『クレヨンしんちゃん』のパブリックイメージに囚われずに、本当にしっかりと作ってある映画だと思う。

『クレヨンしんちゃん』と聞いて、「どうせ子供向けの映画なんでしょ」と思う人も少なくないはずだ。それはそれで仕方ないとも思うし、作品のイメージから言ってもある意味当然だとも思う。

だが、前述の『オトナ帝国の逆襲』もそうだが、気づけば大人の方が涙し、感動し、圧倒される作品も少なくない。

個人的にも『クレヨンしんちゃん』は侮れない映画だ。

中には「ヲタ向けに人気のキャラクターさえ出してしておけばOK」みたいなアニメ映画もあるだろうが、『クレヨンしんちゃん』はそうではない。

いかに作品が観客に対して真摯に誠実に作られているかの証明だとも思う。

もちろん子供のみならず、オトナが観ても大丈夫。クレヨンしんちゃん屈指の感動作を楽しんでほしい。

評価・レビュー

93点

本作の完成度を示すエピソードとしては、山崎貴監督によって実写リメイク作(『BALLAD 名もなき恋のうた』)が制作されたことからも明らかだろう。

山崎貴はジャンルを問わず自分が知っているストーリーの中で一番いい物をと考えると本作に行き当たったと述べている。

この前年に公開された『オトナ帝国』とともに、『クレヨンしんちゃん』が子供向けの作品の枠を越えて、幅広い年代に訴求できるそのポテンシャルの高さを見せつけることができたのではないだろうか。オトナが観ても大丈夫。クレヨンしんちゃん屈指の感動作を楽しんでください。

作品情報・キャスト・スタッフ

監督
原恵一

脚本
原恵一

原作
臼井義人

製作
茂木仁史
太田賢司
生田英隆

出演者
矢島晶子
ならはしみき
藤原啓治
こおろぎさとみ
屋良有作
小林愛
山路和弘
宮迫博之
蛍原徹

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。