『雨を告げる漂流団地』つまらなく感じてしまう理由は何なのか?

概要

『雨を告げる漂流団地』は2023年に公開された石田祐康監督、田村睦心主演のアニメ映画。

あらすじ・ストーリー

解説・感想

スタジオコロリドの長編第一作となった『ペンギン・ハイウェイ』は大人も満足できるファンタジー作品だった。

『ペンギン・ハイウェイ』の監督は石田祐康。彼が再び監督を務めた、スタジオコロリド三作目の作品が『雨を告げる漂流団地』だ。

本作は近年の映画には珍しい、原作のないオリジナル脚本の作品だ。その挑戦的な姿勢は称賛したいが、果たして完成した作品はどうにもチグハグな印象を受ける。

本作ではそれぞれの事情から団地に集まった小学生たちが、激しい雨に襲われたあと、団地が海に浮かぶ「孤島」になってしまった中でどうやって元の世界へ戻るのかを描いた作品だ。

『ペンギン・ハイウェイ』に引き続き、小学生を主役にした作品だが、監督の石田裕康自身、小学生時代が一番楽しく、思い入れがある時代だという。

特に今作は大人たちがほとんど出てこないという大胆な設定になっている。完全に子供たちだけの世界なのだ。

だが、それが功を奏しているのかと言われると疑問だ。確かに小学生らしさをリアルに表現しようとした演出は見事なのだが、それぞれの「子供らしさ」が物語の進行を阻害しているのだ。

それぞれが素直になれず醜態をつきあう。序盤はまだ良いのだが、中盤以降も折につけこの展開が繰り返されると観ているこちらも若干疲れてくる。

『ペンギン・ハイウェイ』はその点で言えば「等身大の子供たち」というにはやや大人びたキャラクターだったと思う。また『ペンギン・ハイウェイ』では時折大人の視点や意見が盛り込まれているために、観ているこちらとしてもフラストレーションを感じることはない。

両者に共通するテーマはノスタルジーであり、そういう意味では子供向けのアニメではないのだろう。

しかし、それではこのテンポでは大人向けとしては厳しい。かと言って子供向けと言うにはこの作品は難解だろう。

『雨を告げる漂流団地』はどちらの方向を向いている作品なのか、いまいち掴めないのだ。

評価・レビュー

38

とてもチャレンジングな作品だ。だが果たして「団地」にノスタルジーを感じる人がどれだけいるのか?個人的には団地そのものというよりも、彼らが身近な環境の中を「冒険」するというシチュエーションに懐かしさを感じた。

これだけのものを作れるのはやはり才能。今作ではチクバグ感やテンポの悪さが目立ってしまったが、また次作を楽しみに待ちたいと思う。

作品情報・キャスト・スタッフ

2022年製作/119分/日本

監督
石田祐康

脚本
森ハヤシ
石田祐康
坂本美南香

主演
田村睦心
瀬戸麻沙美
村瀬歩
山下大輝
小林由美子
水瀬いのり
花澤香菜

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。