『エド・ウッド』史上最低の映画監督の半生

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概要

『エド・ウッド』は1994年に公開されたSF映画。「史上最低の映画監督」と呼ばれるエド・ウッドの半生を描く。
監督はティム・バートン、主演はジョニー・デップが務めている。

あらすじ・ストーリー

50年代のハリウッド。映画監督として成功を目指す青年、エド・ウッドは自身と同年代のオーソン・ウェルズが映画監督として高い評価を得ていることに焦りを感じながら日々を送っていた。エド・ウッドは監督した舞台の批評が酷評ばかりでもめげない、どこか楽天的な男でもあった。そんな時、彼は世界初の性転換手術成功のニュースを見る。彼はそれを元に自身の監督作として映画化を目論むが、完成したそれは内容も支離滅裂で訳のわからない映画だった。

感想・解説

史上最低の映画監督

生前はほとんど顧みられることがなく、貧困のうちにアルコール依存症によって亡くなった映画監督、エド・ウッド。彼の人生をこう書いてしまえば、あたかも彼がゴッホのような悲劇の天才芸術家であるかのように思ってしまうが、エド・ウッドは「史上最低の映画監督」として評価されつづけている。
彼がそのように評価されるきっかけは、安く買い叩かれた彼の映画が深夜のテレビで繰り返し放送され、そのあまりのつまらなさにカルト的な人気が出たからだ。

クエンティン・タランティーノやサム・ライミなど、現役の映画人にもエド・ウッドのファンを公言する人は少なくないが、どうも一癖や二癖もありそうな人物ばかりである。
その中でも一際エド・ウッドへの愛情を持っていたのが本作の監督でもあるティム・バートンだった。ティム・バートンは「ぼくはテレビでエド・ウッドの映画を見て育った」と語る。バートンはエド・ウッドの人生を喜劇的に演出して見せた。

主演はティム・バートンの盟友とも言えるジョニー・デップ。ジョニーが実在の人物を演じるのは今作が初めてだった。後にジョージ・ユングやホワイティ・バルジャー、ジョン・デリンジャーなどの実在の人物を演じていくジョニー・デップだが、エド・ウッドについての史料は極めて少ない。ジョニー・デップは史実のエド・ウッドよりも、イメージとしてのエド・ウッドを演じるように心がけたという。
その結果、本作のエド・ウッドは困難な状況であっても前向きに情熱を持って映画製作に邁進する男となり、かなり喜劇的な作品となっている。

エド・ウッドへの最大の賛辞

そこにはティム・バートンのエド・ウッドへの思慕もあるのだろう。ティム・バートンは劇中にエド・ウッドがオーソン・ウェルズと邂逅を果たすシーンを加えた。この二人の対面は事実ではなく、ティム・バートンの創作であるが、これこそがティム・バートンのエド・ウッドに贈る最大の賛辞ではないだろうか。
オーソン・ウェルズもエド・ウッドも映画に傾けた情熱は決して変わらないはずだ。

ジョニー・デップはエド・ウッドについて以下のように語っている。「エドはチャンスをつかむことを恐れず、本当に自分のやりたいことをやった人だ。自分のできる限りのベストをつくし、シュールで天才的な瞬間を繋ぎ合わせた映像を作り上げたと思う。彼の映画は彼そのものであり、正真正銘の天才だ。エドが芸術として記憶されることを願う。」

真の芸術

この映画には真の芸術とは何か、ということを考えさせられる。

1957年のカーク・ダグラス主演の映画『炎の人 ゴッホ』でも同じようなテーマが描かれているが、人に認められることと、自分の表現を突き詰めていくことのどちらが真の芸術家、クリエイターなのかということだ。

『炎の人 ゴッホ』では生前絵の才能はありながらも周囲の評価は得られず苦悩するゴッホの姿が描かれる。ゴッホにとって芸術は聖域のようなものだった。

エド・ウッドも同様に周囲からはほとんど理解されなかった。彼のやりたいことはことごとくスタジオやプロデューサーから否定される。

評価・レビュー

75点

全編モノクロでテーマもエド・ウッドという一部の映画ファンしか知らないであろう人物のことなので、観る人をそれなりに選ぶ作品ではあるだろう。

しかし、この映画には観る人を幸せにする何かがある。実際はアルコール依存症で貧困の中で亡くなったエド・ウッド。そして、彼が作ったどの映画も決して面白いものではない。

しかし、この映画のエド・ウッドは私たちを大いに楽しませ、勇気づけてくれる。

エド・ウッドが映画で目指したエンターテインメントを、ティム・バートンは見事に実現してみせた。

エド・ウッドその人をテーマにして。

作品情報・キャスト・スタッフ

1994年製作/ 127分/アメリカ

監督
ティム・バートン

脚本
スコット・アレクサンダー
ラリー・カラゼウスキー

主演
ジョニー・デップ
マーティン・ランドー
サラ・ジェシカ・パーカー
パトリシア・アークエット

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ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。