概要
『フロスト×ニクソン』は2008年に公開されたドラマ映画。監督はロン・ハワード。主演はマイケル・シーンが務めている。
1977年に放送されたデイヴィッド・フロストによるリチャード・ニクソン元大統領のインタビュー番組を題材にしている。
元々は脚本を手掛けたピーター・モーガンの舞台が原作となる。フロストを演じたマイケル・シーン、ニクソンを演じたフランク・ランジェラはそれぞれ舞台版からの続投となる。
第81回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされた。
あらすじ・ストーリー
ウォーターゲート事件で辞任したニクソンは罪を認め国民に謝罪することなく、政治の世界から姿を消した。
しかし、自叙伝の出版により政界にカムバックしようとしているニクソンに対し、イギリスのテレビ司会者のデヴィッド・フロストはインタビューの機会を狙っていた。
フロストは主婦向けのテレビ司会者という自らのパブリック・イメージをニクソンとのインタビューによって打破しようと考えていた。もしインタビューの中でニクソンから過ちを認める言葉を引き出せたら、それは今の自分の立ち位置から数段キャリアアップし、アメリカへの進出も見込める。
一方のニクソンはインタビューを通して自身のイメージの回復をしたいという思惑があった。
そして、ニクソンとフロストのTVインタビューが全米に放送されることになる。
感想・解説
ウォーターゲート事件でリチャード・ニクソンは失脚した。任期の途中で辞任したのはアメリカの政治史上、ニクソンが唯一だった。
だが、辞任してもニクソンへの国民の批判の声は止まなかった。ニクソンが自身の行為を認めず、謝罪もしなかったからだ。
『フロスト×ニクソン』は1977年に行われたデヴィッド・フロストとリチャード・ニクソンのテレビインタビューを描いた作品だ。
台詞も、結末も決まっている物語のためにそれをどう盛り上げていくのかというのは非常に難しくなるだろうが、ロン・ハワードはそれを極上のエンターテインメントに仕上げて見せた。
フロストは借金を重ねてニクソンのインタビュー権を勝ち取る。インタビューが成功すればアメリカへの進出も果たせるが、失敗すれば莫大な借金だけがのこる。
ニクソンはインタビューでイメージ回復ができれば再び政治家として返り咲けるが、できなければこのまま政治生命も断たれてしまう。
お互いが絶対に負けられない理由を背負っての緊張感溢れるインタビューシーン。
監督のロン・ハワードは本作を「『ロッキー』の頭脳版」だと説明する。フィジカルなバトルではないが、確かにテレビという戦場で彼らは激しく打ち合っている。
ニクソンはハリウッド映画の中でも悪役として登場することが多いが、今作ではニクソンの生い立ちを通して、なぜ彼が法律を無視して権力を行使するに至ったのか、その背景が明らかになる。
評価・レビュー
91点
『フロスト×ニクソン』は派手なエンターテインメント作品でもなく、アクションもまたなければ衝撃的なサスペンスでもない。それなのになぜこれほどスリリングでエモーショナルな作品に仕上げることができるのか。
なぜ30年前のインタビュー番組を2008年に映画化する必要があったのか?
日本とは違い、エンターテインメントが、現実社会に警報を鳴らす存在として機能しているのは素晴らしいと思う。
作品情報・キャスト・スタッフ
2008年製作/122分/イギリス・アメリカ
監督
ロン・ハワード
脚本
ピーター・モーガン
主演
フランク・ランジェラ
マイケル・シーン