概要
『GODZILLA ゴジラ』は2014年に公開されたギャレス・エドワーズ監督、アーロン・テイラー=ジョンソン主演の怪獣映画。ハリウッドでゴジラ映画が作られるのは1998年にローランド・エメリッヒが監督した『GODZILLA』以来2度目となる。
あらすじ・ストーリー
1999年、芹沢猪四郎博士はフィリピンで恐竜のような生物の化石と、そこに寄生する繭、そして繭から何かが這い出たような痕跡が残っていた。
一方、日本では原発の原子炉直下で不可解な地震が起きていた。核物理学者のジョーは妻とともにその調査に行くが、その時に起きた巨大な揺れによって原発は倒壊し、ジョーは妻を失ってしまう。
15年後、ジョーの息子でアメリカ海軍の爆発物処理班であるフォードは日本で父が逮捕されたという知らせを受ける。
ジョーは今は立入禁止区域となった原発へ侵入しようとしていたのだ。
ジョーはフォードに15年前と同じ兆候が起きているというが、二人は武装集団によって連行され、モナークと称する秘密組織の元へと連れて行かれる。
モナークにはあの地震の原因となった生物が這い出たのと同じ繭があった。
繭の中から生物が羽化し飛び立つ。それによってモナークの建物は崩壊し、ジョーは命を落とす。
ムートーと名付けられた生物を追う芹沢とフォード。芹沢はムートーの排除のためにゴジラも必ず姿を表すと予想する。
そして、芹沢の予想通り、ホノルル空港に60年ぶりにゴジラが現れ、ムートーと交戦するのだった。
感想・解説
ゴジラ映画を作ることのハードルはものすごく高い。権利関係を抜きにしても、ゴジラ映画はもはや子供向けの怪獣映画ではなく、大人までを満足させねばならない、全方位向けの力を持った作品でなければならないからだ。それには単なる怪獣同士のドンパチではダメだ。
そして、CGに見慣れた今、かつてのような特撮の着ぐるみはもはやチープに見えてしまう。その技術的な問題もある。
更にハリウッドでゴジラ映画を作るとなると、1998年に公開された『GODZILLA』の二の舞いになりはしないかという危惧もある。
ギャレス・エドワーズ監督はそれらのハードルを軽々と超えてみせ、より高いハードルをゴジラ映画に課してしまった。
ゴジラ映画の持つ反核のメッセージ、また怪獣同士の戦い。私がそうであったように、子供の頃は怪獣同士の戦いに興奮していても、大人になるにつれてゴジラ映画の魅力はそのメッセージ性にあることを知るだろう。
1954年に作られた最初の『ゴジラ』は人類にとって恐怖そのものの怪獣であると同時に、人類が生み出した水爆から生まれた哀しき生き物でもあった。
あくまでもハリウッドが作ったゴジラ映画なわけで、核爆弾に対して日本人ほどの想いは持ち得ていないだろうが、それでも原爆とゴジラを結びつけたシーンがあるだけでも今作には拍手を贈りたい。
もちろん、ゴジラ描写もハリウッドならではのCG技術と演出で申し分のない出来になっている。1998年に公開された『GODZILLA』は「デカいトカゲ」と酷評されたが(もちろん『ジュラシック・パーク』以降の恐竜型の怪獣を描く場合、前傾姿勢にする方が理にかなってはいるが)、ギャレス・エドワーズはあくまでもゴジラを直立の姿勢にさせた。それどころか、ゴジラの「着ぐるみ感」までも再現している。
エメリッヒは後にゴジラというキャラクターに思い入れがなかったことを明らかにしているが、ギャレス・エドワーズのゴジラ愛は本物だ。
評価・レビュー
93点
まさに衝撃的な作品だった。私自身ゴジラの大ファンであり、今作ももちろん映画館で観たのだが、終わった瞬間から次作が待ちきれなくなった。
本作はゴジラの歴史を変えたターニングポイントとなる作品とも言える。
冒頭でも述べたように、今作以降、ゴジラ映画はかつてのような子供向けの作品では許されなくなり、大人も満足させ、かつ単なる怪獣同士の戦いでは許されなくなった(特に日本ではそうだ)。
『シン・ゴジラ』、『ゴジラ-1.0』その後に公開された日本のゴジラ映画はかつてのような年に一回というペースではもはやないものの、以前とは比べものにならないほどの熱量を持って製作されるシリーズになった。
個人的にはゴジラ映画が邦画の真の実力を測る物差しになったようにも感じている。
ハリウッド版のゴジラはモンスターユニバースのキャラクターとなり、回を重ねるごとにエンターテインメントだけの作品になってしまったみたいで、まるで昭和のゴジラが「東映チャンピオンまつり」に組み込まれていったような虚しさを感じるのだが、邦画は違う。
だが、日本のゴジラ映画を蘇らせたのは、間違いなくギャレス・エドワーズの『GODZILLA ゴジラ』なのだと思う。
ほとんど完璧なゴジラ映画だ。
作品情報・キャスト・スタッフ
2014年製作/123分/アメリカ
監督
ギャレス・エドワーズ
脚本
マックス・ボレンスタイン
フランク・ダラボン
デヴィッド・キャラハム
ドリュー・ピアース
デヴィッド・S・ゴイヤー
主演
アーロン・テイラー=ジョンソン
渡辺謙
エリザベス・オルセン
ジュリエット・ビノシュ
サリー・ホーキンス
デヴィッド・ストラザーン
ブライアン・クランストン