概要
『グリーンブック』は年に公開されたピーター・ファレリー監督、ヴィゴ・モーテンセンマハーシャラ・アリのドラマ映画。実在の黒人ピアニスト、ドン・シャーリーと、彼のボディガードとして雇われたとの交流を描いたロードムービーだ。
あらすじ・ストーリー
感想・解説
もともとマハーシャラ・アリが好きなのとアカデミー賞作品賞にノミネートされていたのを知って興味があり、公開時に映画館まで観に行った作品だ。
鑑賞後も心地良い余韻を感じることができ、個人的には素素直に楽しめた。
タイトルにもあるグリーンブックとは、ジム・クロウ法が施行されていたアメリカで、黒人が泊まれる場所をリストアップした小冊子のこと。
監督のピーター・ファレリーは今作に携わるまでグリーンブックの存在は知らなかったと発言している一方で、黒人のマハーシャラ・アリは存在は知っていたと述べている(ちなみにアリはグリーンブックについて必ずしも否定的ではなく、当時の黒人を安全な場所へ誘導するポジティブな役割も持っていたと発言している)。
『グリーンブック』がアカデミー作品賞を受賞した時は物議を醸した。スパイク・リーをはじめとして今作が作品賞に選ばれたことを批判する声も少なくない。
それはなぜだろうか。
まず1つに「黒人を白人が救う」物語に見えてしまうからだろう。いわゆるホワイト・ナイトというやつだ。
だがそれは正しいようで、正確ではない。確かに黒人差別の激しい南部でチューリップがシャーリーを救う場面はある。エンディングもそういうふうに見えてしまうかもしれないが、一方でもまたシャーリーの振る舞いや教養に助けられている(手紙の書き方がいい例だ)。
いわゆるバディものとも言える作品だが、バディであればお互いを補い合い、助け合うのも当たり前だろう。
まぁラストもそうだがが、全体としてがシャーリーを助けた印象の方が強いのは否めないが。
ただ、物語の冒頭で黒人への差別意識を持っていたが、ドン・シャーリーとの旅を通して黒人への偏見を改めていくのに対して、作品を観ている私たちが差別意識を盛り上げてしまっては本末転倒な気もする。
今作は『大統領の執事の涙』と同じく『フォレスト・ガンプ』が描かなかったアメリカの姿が描かれている。
『フォレスト・ガンプ』の舞台となるアラバマ。
奇しくもシャーリーとトニーのコンサートツアーの最終地もアラバマだった。
彼らはそこでまたも『黒人は白人と同じ場所は使えない』という差別を受ける。
またシャーリーが招かれた家では、ゲストであるにも関わらず、家のトイレは白人専用として使わせてもらえず、庭にある粗末なトイレを使えと言われる描写がある。
加えて、シャーリーはゲイでもあった。作品にはっきりした明言はないものの、シャーリーが警官に捕まった場所には『YMCA』の文字が。
日本では故・西城秀樹のイメージが強いYMCAですが、「Y.M.C.A.」(Young Men’s Christian Association)もともとの意味は、キリスト教青年会による主に男性の若者のための宿泊施設のこと。そこには相部屋の部屋もあるためゲイの出会いの場にもなりやすいとされている。
しかし、そのようなマイノリティへの差別意識はトニーの中からとうに消え去っていた。
旅を通して、2人が(特にトニーが)理解し合い、成長していく物語はオーソドックスだが、それだけに普遍的な良作と言える。
個人的には成長していくのはどちらかといえばトニー側なので、黒人が白人に助けられているという従来のステレオタイプな図式はこの映画にはやや的外れではないかと感じるのだが。
評価・レビュー
86点
良作ではあるものの、優等生的な作りに留まってしまった作品でもあると思う。
作品情報・キャスト・スタッフ
2018年製作/130分/アメリカ
監督
ピーター・ファレリー
脚本
ニック・ヴァレロンガ
ブライアン・ヘインズ・カリー
ピーター・ファレリー
主演
ヴィゴ・モーテンセン
マハーシャラ・アリ
リンダ・カーデリーニ