『ハンニバル』原作はあとから読むべし!

概要

『ハンニバル』は2001年に公開されたリドリー・スコット監督、アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア主演のサスペンス映画。

あらすじ・ストーリー

感想・解説

中学校の頃、学校で朝の15分間読書があった。どんな本でもいいので、15分間読書をしましょうというもので、もしかしたら経験した人も多いかもしれない。

田舎の中学生だった私だが、その時に読んでいたのはあろうことかトマス・ハリスの『ハンニバル』だった。

しかし、なぜ『ハンニバル』だったのだろう?今振り返ってもその理由がよくわからない。

なにせ前作の『羊たちの沈黙』は当時はトラウマ映画だった。精神異常者達が収容されている刑務所の通路を若く美しいクラリス・スターリング(演じているのはジョディ・フォスター)が歩く。そこに塀の中から飛ばされていく無数の腕。開始30分くらいの場面だったと思うが、小学生だった私はそこでリタイアしてしまった。

だが、それでもハンニバル・レクターのキャラクターは強烈であり、また魅力的でもあった。小学校高学年から中学生にかけては、少し背伸びもしたくなる時期だ。

私は何を思ったのか(本当に何を思ったのか)冒頭に述べたトマス・ハリスの『ハンニバル』を購入していたのだ。

レクターというキャラクターのどこが魅力的なのか。個人的にはその残酷さよりも、レクターの趣味であったり嗜好に興味を惹かれた。

フェルメールを好み、ダンテを語り、安物の香水の匂いに嫌悪感を感じる、レクターの趣味はいわゆる上流貴族のそれであり、そんな世界は私の暮らす田舎のどこにも、欠片さえなかった。

さて、この『ハンニバル』だが、原作の魅力をそのまま映像化しているかといえばそうではない。原作ではイタリアには多くの紙幅を割き、独立した中編としても成立しうる細やかさやスリルに満ちているが、映画ではレクターが単にイタリアで殺人を行っただけの描写にとどまり、原作の魅力はほとんど残っていない。

また、本作はリドリー・スコットの復活作(実際『G.I.ジェーン』以降、リドリー・スコットは一時低迷していた)とも言われるが、映画の雰囲気であったり、格調、怖さの面でも前作『羊たちの沈黙』には敵わないとも思う。

正直、凡百なハリウッド映画になってしまったとさえ言っていい。

評価・レビュー

64

というわけで低めの点数になってしまった。キャストのせいにはしたくないが、どうしてもクラリスがジュリアン・ムーアではなく、前作のままジョディ・フォスターが登板してくれていたら、もしかしたら印象ももう少し変わったかもしれないが。

ちなみに本作のラストは原作とも違う、映画オリジナルのもの。原作者のトマス・ハリスは映画版の結末について(自分の書いた)小説よりも素晴らしいと絶賛したという。

それを観るだけでも本作の価値はあるかも知れない。

作品情報・キャスト・スタッフ

2001年製作/131分/アメリカ・イギリス・イタリア

監督
リドリー・スコット

脚本
デヴィッド・マメット
スティーヴン・ザイリアン

主演
アンソニー・ホプキンス
ジュリアン・ムーア
レイ・リオッタ
フランキー・R・フェイソン
ジャンカルロ・ジャンニーニ
フランチェスカ・ネリ
ゲイリー・オールドマン

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ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。