『素晴らしき哉、人生!』なぜ映画史に残る名作は惨敗したのか?

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概要

『素晴らしき哉、人生!』は1946年に公開されたフランク・キャプラ監督、ジェームズ・スチュアート主演のドラマ映画。公開当時は興行的・批評的に成功しなかったものの今日では映画史に残る名作として強い人気を誇っている。

フランク・キャプラの集大成的な作品でもあるが、キャプラ自身は本作の失敗にひどく落ち込んでしまったと言われる。

あらすじ・ストーリー

落ちこぼれの二級天使であるクラメンスは大天使よりある男を救うように命じられる。

その男はジョージ。彼は事業の失敗により今から自殺するところだった。

クレメンスは彼を救う準備として、幼い頃からのショージの人生を辿っていく。

感想・解説

フランク・キャプラが戦前〜戦中のハリウッドを代表する映画監督であることに異論を挟む者は少ないだろう。『或る夜の出来事』、『スミス都へ行く』『群衆』など、キャプラの作品はどれもヒューマニズムに溢れ、ハッピーエンドが待ち受けている。

そんなキャプラの純粋な作風は「キャプラスク」とも呼ばれ、キャプラを一躍ハリウッドの名監督の位置にまで押し上げた。

もともとキャプラはイタリアの出身で幼い頃に家族とともにアメリカへ渡ってきた。職を転々としながらキャプラは映画監督としてアメリカで成功を掴む。

キャプラにとってはアメリカンドリームを実現した瞬間だっただろう。キャフラスクが基本的にアメリカという国や文化を賛美しているのにはキャプラのそうした実体験もあったからだろう。

『素晴らしき哉、人生!』はそんなキャプラスクの集大成となる作品だったが、公開当時は失敗作の烙印を押されてしまった。アカデミー賞にも作品賞他計5部門にノミネートされるものの、作品賞は盟友であるウィリアム・ワイラーの『我等の生涯の最良の年』に譲る結果となった。その後ワイラーが『ローマの休日』や『ベン・ハー』で不朽の名作を生み出していくこととは対称的にキャプラはそのキャリアを閉ざされてしまうことになる。

思うに戦後間もないアメリカでは、復員兵たちの現実と希望を描いた『我等の生涯の最良の年』の方が受け入れやすかったのだ。戦争が終わってすぐのアメリカにはキャプラスクは眩しすぎたということだろう。

その証拠に『素晴らしき哉、人生!』は何度も何度もテレビで放送されていくうちに高い評価を得て、映画史を代表するような傑作の地位まで登り詰めた。戦後の発展の中で名作映画としての評価は逆転したのだ。

『素晴らしき哉、人生!』は誰もがこの世界に必要不可欠な存在であることを教えてくれるファンタジーだ。

自分なんて、そう思うときには是非観てほしい。すでに80年近く前の作品ではあるが、面白さは色褪せない、まさに不朽の名作だ。

評価・レビュー

87点

名作の名に恥じない作品だ。言葉ではあまり説明したくない。騙されたと思って観てみてほしい。

作品情報・キャスト・スタッフ

1946年製作/130分/アメリカ

監督
フランク・キャプラ

脚本
フランセス・グッドリッチ
アルバート・ハケット
フランク・キャプラ

主演
ジェームズ・ステュアート
ドナ・リード
ライオネル・バリモア
ヘンリー・トラヴァース

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ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
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