『ジョン・ウィック:チャプター2』

概要

『ジョン・ウィック:チャプター2』は2017年に公開されたチャド・スタエルスキ監督、キアヌ・リーブス主演のアクション映画。2014年に公開された『ジョン・ウィック』の続編に当たる。

あらすじ・ストーリー

ジョン・ウィックが元雇い主のヴィゴを倒して3日後、ジョンはヴィゴの弟のアブラム・タラソフの元へ車を取り戻しに現れる。
車を奪い返し、無事に元の生活に戻れるかというときに、かつての貸しがあるイタリア系犯罪組織カモッラの幹部サンティーノ・ダントニオが現れる。サンティーノから借りを返すように迫られるが、ジョンは断る。サンティーノはその報復としてジョンの家を爆破。ジョンはしぶしぶサンティーノの依頼を引き受ける。その依頼とは父の組織を継いだ姉、ジアナ・ダントニオの殺害だった。

任務のためにジアナ・ダントニオが滞在しているローマを訪れたジョン。準備を済ませたジョンはジアナの元へ向かうが、すべてを悟ったジアナはジョンの目の前で自殺する。
一方、サンティーノはジョンを「実の姉を殺した男」として700万ドルの賞金を掛け、ニューヨーク中の殺し屋に公示する。

感想・解説

続編は失敗すると良く言われるが、今作『ジョン・ウィック チャプター2』はそれを上手く回避した方ではないかと思う。

物語は前作『ジョン・ウィック』では敵対する元雇い主であるヴィゴを何とか倒したジョン・ウィック。これで穏やかな日常に再び戻れるのかと思いきや、彼にはイタリアの犯罪組織のトップであるサンティーノ・ダントニオに「誓印」という借りがあった。ある時サンティーノはジョンの家を訪れ誓印の貸しを返してほしいと言う。裏社会では誓印の掟は絶対だ。しかし、ジョンは断り、その報復としてサンティーノに家を爆破される。

犬の次は家かよ!と言いたくなるが、こういうところも『ジョン・ウィック』らしいところだ。
アクション映画も思いっきりエンターテインメントに振り切ったものもあれば、哲学的な問いや社会問題と関連付けたものもある。後者は『マトリックス』や『ターミネーター』などが挙げられる。
もちろん前者は『ジョン・ウィック』だ。
「監督だから当たり前だろ!」というツッコミが来そうだが、創造主だからこそ暴走することもあるのだ。

ターミネーター:ニュー・フェイト』のジェームズ・キャメロンがそうだろう。彼は『ターミネーター』シリーズの生みの親だが、だからこそ未来世界で人類の救世主であるはずのジョン・コナーを殺すという決断ができた。だが、それに対するファンの反応は賛否両論だった。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』は興行的に失敗したが、その一因はジョン・コナーに対するファンの思いの丈を考慮しなかったからではないか?創造主であっても、そのキャラクターの生死まで自由にコントロールできると思ったらこういう事態を招く。創造主よりもファンのほうがキャラクターへの熱量が高い場合は往々にして存在する。

チャドは『ジョン・ウィック』を良くわかっている。今作は前作から繋がる『ジョン・ウィック』らしさはそのままに、世界観をより深く掘り下げている。
ローレンス・フィッシュバーン演じるバワリー・キングの登場はその最たるものだろう。バワリー・キングは主席連合には属さないニューヨーク地下犯罪組織のトップである。
前作のコンチネンタルホテルの描写から殺し屋の世界的なネットワークがあり、ジョン・ウィックもその中に加わっていたことは示されていた。
『ジョン・ウィック:チャプター2』では殺し屋の組織がどのように構成されているのか、バワリー・キングのようなアウトサイダーも含めて詳しく説明されている。

チャド・スタエルスキ監督は「ジョン・ウィックのように多くの人を殺した男の人生が穏やかで幸せであるはずがない」とも述べている。その言葉のように、今作の続編である『ジョン・ウィック:パラベラム』ではさらにジョンは大きな戦いの渦中へ飛び込んでいく。私個人の思いとして『ジョン・ウィック:パラベラム』に関してはやや否定的なレビューを書いているが、チャドの言うことも理解できる。
ただ、『ジョン・ウィック:チャプター2』に関して言えば理想的なファンの望む続編のひとつだと言えるだろう。

評価・レビュー

82点

とうとう家まで壊されたジョン・ウィックである。まぁ精神的には愛犬を殺された前作の方が辛いだろうけど・・・。

考察を求めるような映画でもなければ、感動を誘うような映画でもない。

何よりも制作陣がそのことをよくわかっているのだろう、もうアクションに映画のポテンシャルを全振りしているのが清々しく、観ていてスッキリするのだ。

その代わりにアクションについてはスーツが防弾仕様(だけれど弾が当たるとそれなりに痛がる)であったり、完全に相手を殺すために必ず最後に頭に撃ち込むなど細かいところまでそれなりのリアリティにこだわって作られているのがよく分かる。何も考えずにアクション映画でスッキリしたい人にはおすすめの作品だ。

作品情報・キャスト・スタッフ

2017年製作/124分/イギリス・アメリカ

監督
チャド・スタエルスキ

脚本
デレク・コルスタッド

主演
キアヌ・リーブス
コモン
ローレンス・フィッシュバーン
リッカルド・スカマルチョ
ルビー・ローズ
ジョン・レグイザモ
イアン・マクシェーン

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。