『ジョン・ウィック:パラベラム』ストーリーとキャラクターの乖離

概要

『ジョン・ウィック:パラベラム』は2019年に公開されたアクション映画。監督はチャド・スタエルスキ、主演はキアヌ・リーヴスが務めている。『ジョン・ウィック』シリーズの3作目。

あらすじ・ストーリー

かつて凄腕の殺し屋として裏社会にその名を轟かせたジョン・ウィック。

彼は聖域として指定されているコンチネンタル・ホテルの中で殺人を犯してしまったことから、「ホテルの中で殺しを行ってはならない」というルールに反した罪で追放令を受け、世界中の殺し屋から狙われるようになる。

感想・解説

続編ありきで作られた映画は得てして中途半端になりやすい。
伏線の回収や物語がちょうどいい区切りまでたどり着かずに中途半端に終わってしまうのはその好例だろう。

『ジョン・ウィック:パラベラム』に関して言えば、続編を強く感じさせる終わり方はその通りだが、果たして続編を作る必要のある内容なのか?と強く思わざるを得ない。
そもそもジョン・ウィックは裏社会から足を洗い、一市民として平穏に生きていくことが人生の望みのはずだ。

そんな彼が裏社会に戻るきっかけだったのは亡くなった妻からの贈り物だったペットが殺されたとき、妻との思い出がつまった自宅を破壊されたときの二つ。
第一作目の公開の際には「復讐の動機がペット?」と世界中を驚かせたわけだが、愛する人が遺したものを守り抜きたいという想いは理解ができる。思い出の詰まった自宅にしてもそうだろう。

『ジョン・ウィック:パラベラム』の物語は世界中の殺し屋から狙われることになったジョン・ウィックが
しかし、今作のエンディングでの復讐の動機は自分が殺されかけたからだ。
となると、どうしてもここまで引っ張ってきた「本来は平穏に暮らしたいが、妻との思い出が破壊されたのでやむ無く復讐する」というジョン・ウィック自身のキャラクター像にいささかの矛盾が生じる。

果たしてジョン・ウィックは本当に平穏な人生を望んでいるのだろうか?

もともとスタントマン出身ということもあって、監督のチャド・スタエルスキの演出するアクションシーンはどれも斬新であり、スタイリッシュだ。
その反面、こうしたキャラクター像であったり、ドラマの部分にどうしても弱さが見えてしまう。
もちろん、アクション・エンターテインメントとしてそういった部分を気にせずに観られる人であれば今作はおすすめできる。

しかし、そうでない場合はあらかじめ覚悟して観るべきだろう。

評価・レビュー

40点

個人的にはキャラクター性やドラマの部分まで見てしまうのでこの評価とした。

エンディング次第で映画を生かすことも殺すこともできる。

もし続編があれば、次こそは『ジョン・ウィック』シリーズにふさわしいエンディングを期待する。

作品情報・キャスト・スタッフ

2019年製作/131分/アメリカ

監督
チャド・スタエルスキ

脚本
デレク・コルスタット
シェイ・ハッテン
クリス・コリンズ
マーク・エイブラムス

主演
キアヌ・リーヴス
ハル・ベリー
ローレンス・フィッシュバーン

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。