『黒い司法 0%からの奇跡』オバマ元大統領も推した、冤罪と戦った感動の実話

概要

『黒い司法 0%からの奇跡』は2020年に公開された。監督はデスティン・ダニエル・クレットン、主演はマイケル・B・ジョーダンが務めている。

あらすじ・ストーリー

黒人男性のウォルター・マクミリアンは白人女性を殺害した罪で死刑判決を受けていた。黒人弁護士のブライアン・スティーブンソンはマクミリアンの事件を聞いて、自ら弁護を願い出る。

当初はブライアンに対して冷たい態度を取るマクミリアンだったが、ブライアンの熱意に次第にブライアンを信頼し、二人で無実を勝ち取るための戦いに挑んでいく。

感想・解説

60年代、アラバマは全米の中でももっとも激しく人種差別が行われていた地域のひとつだ。

キング牧師は人種差別に反対し、約600人の公民権運動活動家とともに1965年にアラバマ州セルマからモンゴメリーへの行進を行った。この時、州軍や保安官が行進を暴力によって妨害し、多数の死傷者を出した。これは「血の日曜日事件」と呼ばれる。

現在、有色人種への差別には多くの人が抗議の声を上げ、大規模なデモにまで発展する。また「ダイバーシティ」という言葉がキーワードとなり、アカデミー賞の選考基準にも人種的な多様性は考慮されるようになった。
ただ、今でも人種差別の問題はアメリカに深く根を下ろす。今作『黒い司法 0%からの奇跡』はまさにそのことを重く突きつけるような作品だ。

舞台は1990年初頭のアラバマ。無実の罪で死刑囚となったと、彼を弁護するが差別と戦っていく物語だ。
主演は『クリード』シリーズのマイケル・B・ジョーダン。
実はマイケル・B・ジョーダンのデビュー作は人種差別をテーマに描いた『フルートベール駅で』という作品だ。『フルートベール駅で』も人種差別をテーマに実在の殺害事件であるオスカー・グラント三世射殺事件を描いている。

オスカー・グラント三世射殺事件は2009年に起きた事件で、無抵抗の黒人を白人警官が射撃したのだ。

『フルートベール駅で』は黒人差別を声高に叫んだ作品ではない。
一人の青年の一日を描いた作品だ。ただの何気ない一日であっても、そこにはその人の人生が詰まっている。

それがかくも脆く、あっけなく全て終わってしまうとは。

同じように『黒い司法 0%からの奇跡』でもいつもと同じ日を生きていたウォルターの日常はあっけなく終わる。警官の一言によって。
今作を見ていると、しばしばそれが60年代、公民権運動の時代の出来事ではないかと錯覚してしまう。
しかし、これは実話なのだ。公民権運動からおよそ30年近くたっても、これだけの人間が人種差別的な行為を平然と行っていることに愕然とする。

エンドロールではアメリカの司法について驚くべき事実が述べられる。

評価・レビュー

88点

作品情報・キャスト・スタッフ

2020年製作/137分/アメリカ

監督
デスティン・ダニエル・クレットン

脚本
デスティン・ダニエル・クレットン
アンドリュー・ラナム

主演
マイケル・B・ジョーダン
ジェイミー・フォックス
ロブ・モーガン
ティム・ブレイク・ネルソン
レイフ・スポール
ブリー・ラーソン

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
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