『キック・アス』現実世界でのスーパーヒーローはやっぱりコメディ?

概要

『キック・アス』は2010年に公開された マシュー・ヴォーン監督、アーロン・テイラー=ジョンソン主演のスーパーヒーロー映画。クロエ・グレース・モレッツの演じたヒット・ガールは強い印象を残し、クロエのブレイク作ともなった。

2013年には続編の『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』も公開されている。

あらすじ・ストーリー

さえない高校生のデイヴは誰もヒーローに憧れていながらヒーローになろうとしないことに疑問を持ち、通販で購入したスーツを着用してスーパーヒーローとして活動を始める。

しかし、痩せたオタク少年のデイヴが超人的な能力を持つはずもなく、逆に暴漢に返り討ちに遭い、刺された上に車にもはねられてしまう。

それでもスーパーヒーローの「キック・アス」として活動を続けるデイヴ。

彼の活動は行方不明の猫を探したりという地味なものだったが、ある時、暴漢から一人の男を救ったことで、その様子がYouTubeで話題になり、キック・アスは人気者となる。

親しくなった同級生のケイティが麻薬の売人に悩まされていることを知り、デイヴはキック・アスとしてケイティを守ろうとするが、麻薬の売人たちには敵うはずもなかった。

窮地に陥ったキック・アスの前に、紫の髪をした小学生くらいの少女が現れ、あっという間に売人たちを皆殺しにしていった。

彼女はキック・アスに自らを「ヒット・ガール」だと名乗る。

感想・解説

スーパーヒーロー映画は苦手だ。最近では雨後の筍のように量産されるマーベル映画に対してマーベル疲れという言葉もあるようだが、マーベルの全盛期の頃にはすでにスーパーヒーロー映画は苦手だった。いや、もっと言葉を選ばずに言うなら嫌いなのだ。

どこが嫌いかって?まぁ根本的なところでどうしようもないのだが、リアリティのなさとネーミングセンスの壊滅的なカッコ悪さだ。

例えば「キャプテン・アメリカ」「アイアンマン」うーん、この名前かっこいいか?鋼鉄男だぞ、鋼鉄男。塚本晋也監督のカルト映画みたいだ。

日本の「キャシャーン」とか、「サイボーグ009」とかの方がカッコよくないか?

例えば『ワンダーウーマン』の「ドクター・ポイズン」など、「まんまやんけ!」とツッコみたくなる。ただでさえ戦争犯罪人として罰せられる可能性が高いのに、「ドクター・ポイズン」なんてもう自分から罪を被りに行っているとしか思えない。

前置きが長くなったが、まぁそんなわけでスーパーヒーロー映画は苦手なのだ。

ところが『キック・アス』はそうではない。むしろ好きな映画だ。

デイヴが最初にキック・アスに扮して出勤する場面のリアルさ。街中にグリーンの全身タイツの男がいきなり現れたら誰もがスーパーヒーローではなく、変質者と思うに違いない。そして超人的な力もないデイヴは案の定ボコボコにされて終わってしまう。

この「正義感だけで弱いヒーロー」は何故か妙に応援したくなる。

また、このような世界観だからこそ、ヒット・ガールの強烈な個性が際立って光るのだ。

クロエ・グレース・モレッツを一躍ブレイクさせたヒット・ガールの放送禁止用語を織り交ぜた演技には賛否両論あったものの、それだけ強い印象を残したということだろう。

正統派のスーパーヒーロー映画ではないが、コミカルでそれでいてスパイスもしっかり効いた良作だと思う。

評価・レビュー

80点

気楽に観れるエンターテインメント作品。

2013年には続編の『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』が公開されるが、本作ほどの人気を得ることはできなかった。

それは感想で述べた本作の良さを続編では全て無くしていったからだろうと思う。

作品情報・キャスト・スタッフ

2010年製作/117分/アメリカ・イギリス

監督
マシュー・ヴォーン

脚本
ジェーン・ゴールドマン
マシュー・ヴォーン

主演
アーロン・ジョンソン
クリストファー・ミンツ=プラッセ
クロエ・グレース・モレッツ
ニコラス・ケイジ
マーク・ストロング

>CINEMA OVERDRIVE

CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。