『アメリ』の魅力がわからない?ヒットの理由を考察

概要

『アメリ』は2000年に公開されたジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ主演の恋愛映画。

あらすじ・ストーリー

感想・解説

日本では2016年に『最強のふたり』が公開されるまで、フランス映画の興行収入No.1の座にあったのが『アメリ』だ。

オドレイ・トトゥ演じるコミュニケーション不全の女の子が自分の殻を破って好きな人と結ばれるまでを描いた作品、と書くといかにもありがちな恋愛映画のテンプレートと思われそうだが、全くそうではない。

何しろ、監督のジャン=ピエール・ジュネのデビュー作は核戦争後の世界で人肉を売るパリの肉屋を舞台にした『デリカテッセン』。またハリウッドに出向いて監督した『エイリアン4』はシリーズの中でも群を抜いたグロテスクさで知られている。

そもそも、アメリが日本で公開されるようになった経緯がすごい。

アメリを買い付けたのはホラーやエログロ映画の配給で知られるアルバトロス。当時アルバトロスに在籍していた故・叶井俊太郎氏が監督名とまだ大まかな内容しか書かれていない状態でマーケットから『アメリ』を買い付けたという。

何でもジュネのこれまでの作風から『アメリ』の内容を「根暗な少女が周囲を巻き込んで騒動を起こす」という内容を「少女が周りの人を次々に食べていくホラー映画」と思い込んでしまったらしいのだ。

しかし、『アメリ』は本国フランスでは5ヶ月以上にわたるロングラン。フランスでのヒットもあり、日本でも当時のフランス映画の興行収入歴代No.1となった。

だが、世間的な評価とは裏腹に私自身はイマイチこの作品の魅力が掴めないでいる。

確かにオドレイ・トトゥのファッションや映画全開の雰囲気も素晴らしい。ハッピーエンドなのもいいとは思うが、ストーリーそのものが散漫な気がするのだ。今作はアメリの成長を恋愛という側面を中心に描いた作品だが、話があっちに行ったりそっちに行ったり、エピソードや小ネタが多く、それだけに余計に散漫な印象を受けてしまう。

それとコミュニケーション不全ゆえのアメリのエキセントリックさについていけない部分もある。

こう言ってはなんだが、『アメリ』好きな人の中には「『アメリ』が好きな私が好き」って人、いるんじゃないかな〜?

そこまでの大ヒットを飛ばすには少々個性的過ぎる気もするのだ。

ただ、アメリの不器用さ、社会との距離感のつかめなさに共感した人も少なくなかっただろうことも想像がつく。

監督のジャン=ピエール・ジュネはハリウッドから戻って、素朴なフランス映画を作りたいと思ったと『アメリ』を制作した動機について語っていたが、果たして『アメリ』が素朴なフランス映画と言えるかどうかは疑問だ。

評価・レビュー

44点

『アメリ』のレビューを観ているとストーリーそのものよりも、ハッピーエンドや作品のオシャレな雰囲気、アメリのファッションなどが作品の魅力として述べられていることが多い。

アメリの住む地域はパリの中でも低所得者や移民が多く、アメリの職業(ウェイトレス)も学歴のない人がするイメージのものなのだそうだ。

フランスで『アメリ』のヒットはそうした状況の女の子でも幸せになれるという意味でも受けたのかもしれないが、日本でそこまで『アメリ』の背景が汲み取れられたのかはわからない。

作品情報・キャスト・スタッフ

2001年公開/122分/フランス

監督
ジャン=ピエール・ジュネ

脚本
ジャン=ピエール・ジュネ
ギヨーム・ローラン

出演者
オドレイ・トトゥ
マチュー・カソヴィッツ

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。