『LOGAN/ローガン』

概要

『LOGAN/ローガン』は2017年に公開されたジェームズ・マンゴールド監督、ヒュー・ジャックマン主演のスーパーヒーロー映画。

あらすじ・ストーリー

近未来、ミュータントは絶滅の危機に瀕していた。不老不死の戦士であったウルヴァリンも、アダマンチウムの毒に侵され、老化が進行し今は認知症が進んだミュータントのチャールズの面倒を見つつ、リムジンの運転手として生計を立てていた。

感想・解説

『X-メン』は現実社会のマイノリティへの迫害から生まれた。

原作者のスタン・リーはかつて親族をナチスのホロコーストにより失った過去を持つ。

また、コミックの『X-メン』が発売された頃はまさに公民権運動の真っ只中。黒人差別やユダヤ人への差別などが『X-メン』には迫害されるミュータントという形で描かれている。

2000年に公開された映画版の『X-メン』を監督したブライアン・シンガーにとっても『X-メン』には心から共感できただろう。ブライアン・シンガー自身ががゲイであり、差別されてきた経験を持っているからだ。

本作『LOGAN/ローガン』もミュータントは駆逐され、滅びようとしている世界が描かれている。『X-メン』が描いたメッセージは『LOGAN/ローガン』にも引き継がれているのだ。

年を取らないはずだったウルヴァリンも自らに宿ったアダマンチウムの副作用によって老い、かつての強さは観る影もなく衰え、車の運転手をしながら孤独に暮らしている。

自分の体を盾にしてさえ商売道具の車を守ろうとする、ミュータントの成れの果ての悲哀。

希望のない世界。それが『LOGAN/ローガン』の世界だ。

そんな彼が唯一気にかけているのが、ミュータント、プロフェッサーXのチャールズだ。しかし、チャールズは高齢であり、思考能力も衰え、認知症の症状も現れている。

まさに全てが終わろうとしているミュータントのディストピア。

ローガンはアダマンチウム製の弾丸を一つだけ使わずに持っている。自分を始末するためだ。

『LOGAN/ローガン』はそんな絶望の中で希望を見つけていく物語だ。

ローガンにとっての希望、それはローラだ。同じミュータントで同じくアダマンチウム製の爪を持つ少女。

当初は獣のようだったローラもローガンとの旅を通じて人間らしさを身に着けていく。

ローガンにとってはローラを守ることで自身の死に価値を見出していく。

『LOGAN/ローガン』は明らかに他のアメコミ映画とは一線を画している。

『X-メン』の映画でありながら、本当に描いているのは生と死であり、絶望と希望なのだ。

監督のジェームズ・マンゴールドによると本作は西部劇から強い影響を受けているそうだ。

西部劇のヒーローはガンマンだが、所詮彼らも人殺しであり、いつかはその罰を受けることになるかもしれない。

数多の人々を殺してきたローガンと同じように。

そんな西部劇のガンマンたちが、年老いて最期の日々を描いた作品が『LOGAN/ローガン』ではないだろうか。

評価・レビュー

88

マーベル映画に代表されるようなアメコミ映画はあまり好きではない。毎回毎回世界征服を企む悪と戦うのも大げさだし、ネーミングもコスチュームもアホっぽい。

だが、『LOGAN/ローガン』は他のアメコミ映画にはないリアルさがある。

『LOGAN/ローガン』が提示した絶望の世界は今の私達の現実にもつながる。

『LOGAN/ローガン』に登場した、「USA!」を連呼する若者たちは当時のトランプ政権の支持者たちを思わせる。

排除と差別とフェイク・ニュースなど、経済のみならず様々な問題が私たちの社会には未だに溢れている。

だが、それでもどこかに希望はあるのだろう。『LOGAN/ローガン』はそれを力強く描いた作品だ。

作品情報・キャスト・スタッフ

2017年製作/ 105分/アメリカ

監督
ジェームズ・マンゴールド

脚本
ジェニー・ビックス
ビル・コンドン

出演
ヒュー・ジャックマン
ザック・エフロン
ミシェル・ウィリアムズ
レベッカ・ファーガソン
ゼンデイヤ
キアラ・セトル

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。