概要
『深夜食堂』は2015年に公開された松岡錠司監督、小林薫主演のドラマ映画。
あらすじ・ストーリー
夜更けとともに明かりの灯る「めしや」は今日も常連客で賑わっていた。
ナポリタン
マスターには悩みのタネがあった。それは誰かがお店に置いていった骨壺。
ものがものだけにどうすることもできずにいたマスターだが、お店に一人の女声が現れる。その女性は長年愛人をしていたが、最近その不倫相手が亡くなったのだという。
とろろご飯
ある夏の夜に一人の若い女性がお店にやってくる。その人はとろろご飯を注文するが、出来上がるまでにおひたしなどを食べた後、姿を消す。無銭飲食だったのだ。
数日後、その女性はみちると名乗り、無銭飲食を謝り、マスターに店で働かせてほしいという。
腱鞘炎で満足に料理の作れなくなっていたマスターはみちるを雇う。みちるは料理の腕も確かで常連客からの評判も上々だ。だがみちるには秘密にしているある事情があった。
カレーライス
あれから骨壺の引き取り手は一向に現れなかった。マスターは寺で供養してもらうことに決めるが、骨壺の中にあったのは大量の砂だった。
そして、ようやく骨壺の引き取り手が現れる。
感想・解説
最初に謝っておきたいが、私は『深夜食堂』の原作漫画もドラマも観たことがない。
それでも『深夜食堂』シリーズは大好きな映画だ。
私はあまり邦画が好きではない。もちよん三谷幸喜監督や西川美和監督のように邦画にも好きな映画監督はいるのだが、メジャーな作品になればなるほど、演技力とは無縁な人気先行のキャスティングやステレオタイプな演出、キャラクター像が鼻につくからだ。
それでも邦画でしか表現できない魅力を持った映画もある。例えば『勝手にふるえてろ』の持つ疎外感や孤独感、こじらせ形は日本人の感性をそのまま表した作品でもあるし、『図鑑に載ってない虫』や『亀は意外と速く泳ぐ』などの三木聡監督の脱力系コメディのシュールな笑いもまた日本人ならではのドメスティックなものだろう(もちろん日本人にフィットするという意味で、海外で通用しないということではない)。
『深夜食堂』シリーズもそんな日本ならではの情景が丁寧に描かれていて好きな作品だ。料理をする時の包丁とまな板の音、食堂に集う人々の人生模様、なんというか、トレンディドラマのような「作られた日常」ではなくて、庶民の地の生活をそのまま映し出したような作風に魅力を感じる。例えるなら雰囲気の良いホテルや旅館ではなく、実家にいるようなそんな素朴さだ。
『深夜食堂』シリーズはグルメ映画というよりも、小林薫が営む定食屋を軸にした人情モノの作品だが、映画版は3つの話から構成されている。まるで短編小説集を読んでいるかのような心地よさも本作の大きな魅力だろう。
評価・レビュー
94点
ほっと心をくつろがせてくれる映画だ。寒い日のこたつのような、実家の和室のような、そんな得も言われぬ雰囲気を持った作品。この感触は邦画以外では味わえないだろう。こんな作品もあるから、私は何年も邦画を見捨てられないままなのだ。
作品情報・キャスト・スタッフ
2015年製作/119分/日本
監督
松岡錠司
脚本
真辺克彦
小嶋健作
松岡錠司
出演
小林薫
高岡早紀
柄本時生
多部未華子
余貴美子
筒井道隆
菊池亜希子
不破万作
綾田俊樹
松重豊
光石研
安藤玉恵
須藤理彩
小林麻子
吉本菜穂子
中山祐一朗
山中崇
宇野祥平
金子清文
平田薫
篠原ゆき子
渋川清彦
谷村美月
田中裕子
オダギリジョー