『ネバーランド』

概要

『ネバーランド』は2004年に公開されたマーク・フォースター監督のファンタジー映画。『ピーターパン』の生みの親、ジェームズ・バリがシルヴィア夫人と彼女の子供たちとの交流を通して『ピーターパン』を完成させる物語を描く。

あらすじ・ストーリー

劇作家ジェームズ・バリは劇作家として名声を持ってはいるものの、上演された作品は支持を得られず、スランプが続いていた。

ある日、ペットの犬のと公園に出掛けたバリはそこでシルヴィア夫人と彼女の6人の子供たちと出会う。

感想・解説

感動ポルノという言葉がある。要は観ている人に感動を強要するような押し付けがましい演出や展開をおこなうことであるのだが、映画に関してもこのようなことはあらゆる作品に散見される。例えば、誰かが死ぬ場面を映画の中のクライマックスに持っていき、これでもかと言わんばかりの演出で泣かせに入る。これは難病系のラブストーリーにはありがちな展開だろう。
もちろんそれが全て悪いと言っているのではない。ただ、死ぬことは必ずしも感動を意味するものではない。感動を得る手段として安易に死を使いすぎていることにどうしようもなく違和感と嫌悪感を覚えるのだ。

では本当の感動とは何だろうか?

それは人間の美しさだ。どうにもならない状況でも、絶望の淵にあっても希望を失わずに生き抜くことだ。もしくは誰かを愛し、愛を叶えることだ。
『ネバーランド』ではこの希望を上手に描いている。希望で観客を感動させられる良作だ。

主人公のジェームズ・バリを演じるのはジョニー・デップ。エキセントリックな役柄が多いイメージでもあるが、このように実在の人物を演じることも多い。
ただ、その顔ぶれを見ると最低映画監督と呼ばれたエド・ウッド、麻薬密売人のジョージ・ユング、公共の敵ナンバーワンと呼ばれたジョン・デリンジャー、大物ギャングのホワイティー・バルジャーなどなかなかの曲者揃いだ。そういった意味ではピーターパンの原作者ジェームズ・バリを演じた今作はある意味では異色とも言えるだろう。

彼はそのキャリアの初期から華々しい大作映画に出ることはほとんどなかった。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の監督、ゴア・ヴァービンスキーは「ジョニー・デップがこんな大作映画に出るなんて信じられなかった」と述べている。同じくゴア・ヴァービンスキーが監督を務めた『ローンレンジャー』では主人公のジョン・リードではなく、その相棒のトントを演じたいと熱望し、スタジオを唖然とさせたジョニー・デップ。
そこには自身もネイティブ・アメリカンの血を引くジョニー・デップの思いがあるのだろう。『シザー・ハンズ』のエドワードしかり、彼の中にはマイノリティへの強い共感があることを感じさせる。それは裏を返せば弱き人々への優しさでもある。実際のジョニー・デップもジャック・スパロウの衣装で子供たちが入院する病院を訪問したり、冤罪で服役した囚人への支援も行っている。
そんなジョニー・デップの優しさがこの『ネバーランド』からは滲み出ているようだ。今作でピーターを演じたフレディ・ハイモアをジョニーは『チャーリーとチョコレート工場』でのチャーリー役に推薦している。

『ネバーランド』はピーターパンの作者であるジェームズ・バリについての映画だ。彼と未亡人であるシルヴィア一家との交流を描く。

シルヴィアを演じるのは『タイタニック』で一躍有名になったケイト・ウィンスレット。

劇作家としてスランプに陥っているバリはシルヴィアとその子供たちとの触れ合いの中で、ピーターパンという物語を思い付く。それは決して大人にならない少年の話だ。

今作のタイトルでもある『ネバーランド 』は重要なキーワードだ。

それは夢が叶うユートピア。バリは幼くして死んだ兄はネバーランドにいるという。バリが兄を失った悲しみを和らげるために作った理想郷がネバーランドだ。

バリの中には大人であることと、子供のような純粋な気持ちを持ち続ける2つの面がある。

ネバーランドはその純粋さの象徴とも言えるだろう。

評価・レビュー

96点

作品情報・キャスト・スタッフ

2005年製作/134分/アメリカ

監督
マーク・フォースター

脚本
デヴィッド・マギー

主演
ジョニー・デップ
ケイト・ウィンスレット

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ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
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