『ステキな金縛り』前代未聞の幽霊裁判の行方は?

概要

『ステキな金縛り』は2011年に公開された 三谷幸喜監督、深津絵里、西田敏行主演のコメディ映画。

ザ・マジックアワー』以来3年ぶりの三谷映画となった。三谷幸喜にとっては5作目となる映画監督作品だ。

あらすじ・ストーリー

裁判でも負け続けのダメ弁護士の宝生エミは上司の速水からある事件の弁護を依頼される。それは妻を殺したとされる夫の弁護だった。夫は妻が殺された時は山奥にある旅館に宿泊していたというが、それを証明するアリバイはない。

しかし、夫はその夜金縛りに遭っていたという。エミは実際にその旅館を訪れ、自身も金縛りに遭う。

エミに金縛りをかけていたのは落ち武者の幽霊である更科六兵衛であった。

エミは六兵衛に驚きながらも、事件の証人として裁判への出廷を求める。

こうして前代未聞の幽霊を証人とした裁判が始まった。

感想・解説

三谷幸喜は優れた脚本家であることはもちろんだが、優れた映画監督でもあると思う。理由はその打率の高さだ。

2015年に公開された『ギャラクシー街道』こそナンセンスなギャグが溢れる怪作だったが、『THE 有頂天ホテル』以降は興行収入30億円という大ヒット作を連発している(ちなみに『THE 有頂天ホテル』は60億円、『ギャラクシー街道』は12億円に留まる)。

スティーヴン・スピルバーグやスタンリー・キューブリックのように様々なジャンルの作品を撮る監督ではなく、基本的にはウディ・アレンのようなコメディ専門の映画監督なのだが(※ウディ・アレンは稀にサスペンスを撮ることがある)、設定の面白さ、アイデアの豊富さで時に時代劇であったり、時に劇中劇であったり、時にSF映画であったりもする。

そういった意味では今回の『ステキな金縛り』は法廷モノだ。

三谷幸喜は法廷モノが好きな作家だ。

法廷モノの古典的名作『十二人の怒れる男たち』のパロディ的な『12人の優しい日本人』という戯曲(のちに映画化)の脚本を書いているし、『古畑任三郎』でも明石家さんまの回では法廷を舞台にしている(もっともこちらは最初は明石家さんまの役柄はロックスターという設定だったが、さんまが法廷劇を希望したことから変更になった。この変更には三谷幸喜自身も乗り気だったという)。

法廷劇と言えば派手なアクションは封印され、会話だけでドラマを盛り上げる必要がある。しかし、『ステキな金縛り』はそんな法廷劇のスタイルを「幽霊の証人」というキャラクターを十分に活かし、セリフ以外でも様々なエンターテインメントを詰め込んでいる。

法廷内外のドラマをこれほどバラエティ豊かに手掛けるのは流石は三谷幸喜と言える。

ちなみにこぼれ話として、阿部寛演じる清水弁護士は元々は太っていたが、病気で痩せているという設定らしい。

よく見ると、阿部寛のスーツのサイズが少し大きいのがわかると思う。

評価・レビュー

92点

どうしても私自身が三谷幸喜ファンなので点数は甘くなってしまうかもしれない。

個人的には『ザ・マジックアワー』と『ステキな金縛り』は兄弟作のように思えてしまう。どちらも冴えない主人公が輝きを得るまでの話だからだ。

前者の原動力が「夢」だとしたら、後者は「家族」といったところだろうか。

個人的に共感するのは『ザ・マジックアワー』の村田大樹だが、ハートフルな気持ちにさせてくれるのは『ステキな金縛り』の方だ。どちらもいい作品だと思う。

作品情報・キャスト・スタッフ

2011年製作/142分/日本

監督
三谷幸喜

脚本
三谷幸喜

出演
深津絵里
西田敏行
竹内結子
浅野忠信
草彅剛
篠原涼子
深田恭子
山本耕史
小日向文世
戸田恵子
梶原善
浅野和之
小林隆
大泉洋
生瀬勝久
唐沢寿明
市村正親
佐藤浩市
阿部寛
中井貴一

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ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。