『プレデター』シュワルツェネッガーをも凌ぐ、プレデターの魅力

概要

『プレデター』は1987年制作のアメリカのSFアクション映画。宇宙から来た高度な科学技術を持つモンスターと特殊部隊員の戦いを描いている。主演はアーノルド・シュワルツェネッガー、監督は『ダイ・ハード』のジョン・マクティアナン。

あらすじ・ストーリー

ダッチ少佐率いる特殊部隊はゲリラ部隊に捕獲された政府要人を救い出すためにバル・ベルデ共和国の密林に侵入する。そこで彼らが見たのは全身の皮を剥がされ逆さ吊りにされた特殊部隊達の死体だった。
そして、ダッチらの仲間は姿の見えない何者かに一人ずつ殺されていく。

案内役として拘束した現地のゲリラ兵士、アンナは「暑い夏に現れる悪魔」の話をする。
罠を仕掛けてようやく姿を見せたのは異形の異星人だった。

とうとう生き残ったのはダッチとアンナだけになると、ダッチはアンナを逃がし、単身で異星人と戦うことを決める。

感想・解説

『ターミネーター4』はアーノルド・シュワルツェネッガー無しのターミネーターに挑んだ意欲作だったが、いざ公開してみると興行成績は惨敗。製作会社のハルシオン・カンパニーは『ターミネーター4』の不振によって倒産という憂き目にあった。
つまりは『ターミネーター』シリーズはシュワルツェネッガー無しでは続けられないシリーズだったのだ。その後の『ターミネーター 新起動/ジェニシス』『ターミネーター ニュー・フェイト』でもシュワルツェネッガーだけは一貫してターミネーターとして出演を続けている。

前置きが長くなったが、『プレデター』だけはシュワルツェネッガーなしでも作品の人気を維持し続けることのできた稀有なシリーズだ。
もともとはハリウッドで流れていたジョーク「ロッキーの相手はもはや地球上には存在しないから次は宇宙人と戦う他ない」を真に受けて脚本を書いたことが本作の製作のきっかけらしいが、優れた科学技術と知性、騎士道精神とも言える倫理を持っていながら、野蛮な文化もあわせ持つというプレデターの斬新さは今なおキャラクターとしての魅力を発信し続けている。仲間が一人一人殺され、満足な武器も無くなるという絶体絶命の状況から主人公がどう反転攻勢をかけていくのかという謎解きのような面白さもある。
監督はジョン・マクティアナン。彼は『ダイ・ハード』も監督している。『ダイ・ハード』もニューヨークの刑事が一人でテロリストという強大な敵に不利な状況のもと一人で立ち向かっていく話だ。

『プレデター』で主役のダッチを演じるシュワルツェネッガーに至っては銃すらなく、木を削るなどの原始的な武器で人類以上の科学力を持った敵に向かっていく。

最後の一撃をと岩を振りかざしたダッチが目にしたのは身動きがとれずに瀕死の状態にあるプレデターの姿。ダッチは止めを差すことを止める。
このときの哀れみを感じさせる表情が素晴らしい。
ダッチが殺すことになんの躊躇も覚えないキャラクターであったなら、どちらが怪物か、もはやわからないのだ。この表情だけで作品に深みをもたらすことに成功している。

評価・レビュー

86点

作品情報・キャスト・スタッフ

1987年製作/107分/アメリカ

監督
ジョン・マクティアナン

脚本
ジム・トーマス
ジョン・トーマス

主演
アーノルド・シュワルツェネッガー
カール・ウェザース
エルピディア・カリーロ

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
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CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。