『ランボー3/怒りのアフガン』タリバンを生んだのはアメリカだった?世界一暴力的な映画は世界一の問題作になった

概要

『ランボー3/怒りのアフガン』は1990年に公開されたピーター・マクドナルド監督、シルヴェスター・スタローン主演のアクション映画。

あらすじ・ストーリー

タイのバンコクで暮らすランボーのもとに、かつての上司であるトラウトマンが訪れる。その目的は、ソ連の暴虐行為の被害を受けているアフガニスタンに武器を供給するための現地調査のための協力依頼だった。だがランボーは「俺の戦争は終わった」とその依頼を固辞する。

トラウトマンは調査隊を率いてアフガニスタンへ向かうが、ソ連兵に捕らえられてしまう。

その知らせを受けたランボーはトラウトマンを救助するため、アフガニスタンへ向かう。

アフガニスタンに向かったランボーはそこで現地のゲリラ兵士とともにトラウトマン大佐を救助し、ソ連の侵攻を迎え討つ。

感想・解説

『ランボー3/怒りのアフガン』は108分の本編の中で人が死ぬという内容から「最も暴力的な映画」としてギネスブックに掲載されたという逸話を持つ。

反政府ゲリラ組織に加担し、という内容だ。

『コマンドー』と同じく、「強いアメリカ」「強烈な反共主義」など、当時のアメリカの姿勢と共通する部分も多い作品だ。

だが、そんな時代も徐々に変わろうとしていた。

今作と同じくスタローンが主演を務めた『ロッキー4/炎の友情』ではソ連の新鋭ボクサー、イワン・ドラゴが敵となる。

感情を見せずに冷酷なまでに戦うドラゴのスタイルはそのままソ連へのアメリカの視線に重なってくる。ロッキーがソ連に渡ってドラゴとの再戦が本作のクライマックスだが、決してあきらめないロッキーの姿勢に、やがてソ連の民衆も声援をおくるようになる。

やがてドラゴが劣勢に立たされると試合を観戦していたロシアの高官たちは席を立ってしまう。

『ロッキー4/炎の友情』では変わらずにソ連は冷酷な存在として描かれはするものの、そこに暮らす人々はそうではなく、いずれわかり会える日が来るというメッセージが描かれている。

『ランボー3/怒りのアフガン』はランボーが反政府ゲリラと共闘して、アフガニスタンへのソ連の侵攻を食い止めるストーリーなのだが、皮肉なことに公開の少し前に実際にソ連はアフガニスタンから撤退する。

「この映画をすべてのアフガン戦士へ捧げる」

『ランボー/怒りのアフガン』のエンディングで上記のメッセージが流れるが、現実にはそのアフガン戦士たちの中からタリバンが生まれ、約10年後にはアメリカに同時多発テロを仕掛けるというのはなんとも皮肉な話だ。

評価・レビュー

59

冷戦が終結するまでは、今作は冷戦構造というバックグラウンドはありつつも、痛快なアクション映画として語られただろう。

だが、9.11を経験した今の世界では、ランボーと共闘したゲリラ兵士たちの中からタリバンが生まれたという皮肉さと、彼らが「正義の側」として扱われていることへの違和感を感じてしまう。

しかし、その一方で、ある時は「味方」として甘い顔をし、ある時は「敵」として手のひらを返す超大国アメリカの姿も透けて見えるのだ。

そして同じようなことがアフガニスタンだけでなく、イラクでも起きたように思う。

「歴史は繰り返さないが韻を踏む」と言ったのはマーク・トウェインだが、『ランボー3/怒りのアフガン』を観るととうもその言葉が頭をよぎってくる。

今の世界の在り方からすると決して褒められた映画ではない。なのでこの点数にしたのだが、しかし、何が今のこの世界を作ったのかということと、人間の愚かさや歴史の皮肉を今作からは強く感じる。そういった意味ではとても価値のある映画だと思う。

作品情報・キャスト・スタッフ

1988年製作/101分/アメリカ

監督
ピーター・マクドナルド

脚本
シルヴェスター・スタローン
シェルドン・レティック

出演
シルヴェスター・スタローン
リチャード・クレンナ
カートウッド・スミス
マーク・ド・ジョング
スピロス・フォーカス
サッソン・ガーベイ
ドウデイ・ショウ
マームド・アサドラル
ジョセフ・シアグ
シャビー・ベン・アロヤ
ハロルド・ダイアモンド

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ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
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