『ランボー ラスト・ブラッド』はつらまない?ひどいという評判は本当なのか?

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概要

『ランボー ラスト・ブラッド』は2011年に公開されたエイドリアン・グランバーグ監督、シルヴェスター・スタローン主演のアクション映画。『ランボー/最後の戦場』以来11年ぶりに公開された『ランボー』シリーズである。

あらすじ・ストーリー

ミャンマーでの出来事から11年後、タイから故郷のアメリカアリゾナ州に帰郷し、旧友のマリアやその孫娘のガブリエラと慎ましくも幸せに暮らしていた。ある時、ガブリエラが友人からガブリエラの実の父を見つけたという情報が入る。

実の父に会いにメキシコに行こうとするガブリエラだが、ランボーとマリアは制止する。

しかし、ガブリエラはこっそり二人に内緒でメキシコへ向かう。だが、実父は家族に冷たい男だった。傷心のガブリエラを友人はクラブに誘うが、そこでガブリエラは人身売買組織に拉致されてしまう。

ランボーはメキシコで消息を絶ったガブリエラの救出に向かう。

感想・解説

『ランボー』シリーズの最新作であり最終作となった今作。『ランボー』シリーズは現実の紛争問題や人権弾圧などの社会問題を抱えた地域を舞台にすることが多く、『ランボー3/怒りのアフガン』ではソ連の侵攻に対してアフガニスタン、『ランボー/最後の戦場』では多くのがされているミャンマーを物語の舞台にしている。

今作では麻薬カルテルやギャングが跋扈するメキシコが舞台だが、これについてはメキシコ人の描き方が差別的だとの批判も起きている。

個人的には今作はある意味ではランボーの原点回帰の側面もあるように思う。

ランボーの家の地下にはかつてベトナム戦争でベトコンたちが使ったような地下壕が張り巡らされており、未だにベトナム戦争が大きなトラウマとしてランボーにのしかかっていることがわかる。

また軍命令などではなく、戦いの動機が個人的な事柄であるのも第一作目の『ランボー』に通じるものを感じさせる。

だが、戦いを描いた部分には満足できるのだが、人間ドラマでの部分では不満の残る作品になった。

ジョン・ランボーという男は戦いのために生きている男なのか?そうではないだろう。1982年に公開された第一作での『ランボー』のラストで戦争のトラウマと世間の冷たさを泣きながら吐露する、優しさと繊細さを秘めた男がランボーの本質ではないか?

ランボーの暴力的なイメージをイメージ付けたのは1986年に公開された『ランボー怒りの脱出』からだったと思うが、それにしても発端はに捉えられたままの捕虜を救出するという責任感と道義的な理由からだった。

今作では娘のように愛していたガブリエラは死に、友人でガブリエラの祖母でもあるマリアも家から去ってしまうが、それらはすべてランボーの戦いのためにしか機能していないように思える。

エンターテインメントとしてそれは正しいのかもしれないが、エンターテインメントに留まらない作品を世間に届けつづけてきたのが『ランボー』シリーズだろう。

評価・レビュー

52点

『ランボー』の最終作にしてはあまりに報われない結末だ。『ランボー』の人生に平穏は訪れないのだろうか?ベトナムからアメリカに戻り、常に祖国から孤独を感じていた男をこのまま孤独の中に留めておくのだろうか。

戦いの場面には満足できるが、作品としての完成度は疑問が残る。

作品情報・キャスト・スタッフ

1953年製作/118分/アメリカ

監督
エイドリアン・グランバーグ

脚本
マシュー・シラルニック
シルヴェスター・スタローン

主演
シルヴェスター・スタローン
パス・ベガ
セルヒオ・ペリス=メンチェータ

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