『グローリー/明日への行進』

概要

『グローリー/明日への行進』は2014年に公開された エイヴァ・デュヴァーネイ監督、デヴィッド・オイェロウォ主演の伝記映画。
公民権運動に大きな功績を残したマーティン・ルーサー・キング・Jr.(キング牧師)を描いた作品だ。

あらすじ・ストーリー

感想・解説

意外にも思えるが、いままでキング牧師を主人公に据えた映画は製作されていなかった。有権者運動に関して大きな意味を持った人物なのになぜ?
それはキング牧師の演説の権利がドリームワークスのもとにあったからだ。
しかし、『グローリー/明日への行進』の監督であるエイヴァ・デュヴァーネイはそれらのキング牧師の演説ををニュアンスを壊すことなく、作り直すことで実現にこぎ着けた。

本作は公民権運動の英雄としてのキング牧師を取り上げた作品ではない。
キング牧師は生前、女性関係のスキャンダルを抱えていたことや、それによってFBI長官のフーヴァーから脅しを受けていたことも明らかになっている。ヒーローではない、一人の人間としてのキング像を『グローリー/明日への行進』では映し出しているのだ。

ちなみに『グローリー/明日への行進』の原題はSELMA(セルマ)。キング牧師と公民権を求める人々が行進を始めた町、アラバマ州ダラス郡の都市の名前だ。ほとんどの日本人に馴染みがないから『グローリー/明日への行進』というタイトルにしたのだろうが、グローリー=栄光というタイトルには違和感を覚える。白人と同等の権利を勝ち取ることは果たして栄光なのか?それは当然の権利ではないのか?

映画では3回に及ぶ行進の様子を描いている。
1回目の行進は1965年3月7日のこと。初日、キング牧師の不参加のためにマスコミの数も少なく、そのために6ブロック行進していた無抵抗の黒人たちに対して州兵や保安官達から凄惨な暴力を浴びせられることになった。凄惨な暴力は「血の日曜日」として人種差別の歴史に残る事件となった。
州兵や保安官達からの弾圧によって17人が病院に運ばれることとなり、特にアメリア・ボイントン・ロビンソンは瀕死の重傷を負うことになった。
この映像がメディアに報じられると、あまりに悲惨な内容に白人を含む人々の間で弾圧への拒否感が高まった。

血の日曜日事件もあり、その2日後の3月9日に行われた2回目の行進はキング牧師に加え、白人の参加者が3割を占めるまでになった。しかし、待ち構えていた警官隊の不自然さに不安を感じたキング牧師は行進の中中止を決める。その判断には賛否両論の声が上がったが、キング牧師の危惧の通りにデモに参加した白人が「白いニガー」として殺害される事件が起きる。

そして3月21日に3回目の行進が行われる。

キング牧師は裁判に訴え、デモ行進は合法との判決を受けて、3回目の行進に臨みます。3月21日のことです。

この時は約3,200人で始まった行進は目的地の州都モンゴメリーに到着する頃には約25,000人にまで達していました。

「この力強いデモは抗議と進歩の偉大なるデモとして後世に伝わるだろう」

「今日は選挙権のためだけの戦いではない
参加することが新たな行動を生み出す力となる
それは敵対心より強いものだ」

評価・レビュー

85点

公民権を求めて戦った人々のドラマとして観た場合、今作の満足度はかなり高いはずだ。

作品情報・キャスト・スタッフ

2014年製作/128分/アメリカ

監督
エイヴァ・デュヴァーネイ

脚本
ポール・ウェブ
エイヴァ・デュヴァーネイ

主演
デヴィッド・オイェロウォ
トム・ウィルキンソン

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。