概要
『ターミネーター:ニュー・フェイト』は2019年に公開されたティム・ミラー監督、 リンダ・ハミルトン、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション映画。
『ターミネーター』シリ―ズとしては第6作目の映画であり、『ターミネーター2』の続編という形をとっている(『ターミネーター3』以降はなかったことにされている)。シリーズに28年ぶりにジェームズ・キャメロンが復帰したことでも話題になった。
あらすじ・ストーリー
審判の日は回避されたものの、1998年に未来から現れた800に息子であるジョン・コナーを殺されてからサラ・コナーは審判の日が回避されたあとも時折現れるターミネーターを始末して生きていた。
そんな中、メキシコに未来から新型のターミネーターが送られてくる。
そのターミネーター「Rev-9」はダニーという女性を殺すようにプログラムされていた。ダニーは弟のディエゴと彼女を守るために未来からやってきたグレースとともに逃げるが、Rev-9との攻防の中で弟のディエゴが命を落とす。
Rev-9に追い詰められたときに一台の車が現れる。そこに乗っていたのはサラ・コナーだった。サラはバズーカでRev-9を撃退する。
ダニーの安全を最優先に考えるグレースはサラをおいてその場から離れるが、強化型人間である彼女はその副作用により瀕死の状態に陥る。ダニーはなんとかグレースに必要な薬を手に入れる。
そしてそこにサラも追いつき、目覚めたグレースから、スカイネットが消滅した未来で、新たにリージョンというAIが人類の敵になっていることを知る。
感想・解説
『ターミネーター:ニュー・フェイト』は『ターミネーター2』以来となるジェームズ・キャメロン復帰作となった。
だが、その内容は賛否両論となり、興行的には失敗した作品となった。その大きな要因としてはジョン・コナーの扱いがあるだろう。
公開前はジョン・コナーの復活と『ターミネーター2』でジョン・コナーを演じていたエドワード・ファーロングの復帰がアナウンスされ、ファンの期待を大いに膨らませた。
しかし、いざ映画が公開されると救世主であったはずのジョンは早々に舞台から退出してしまう。
物語の展開としても未来から最新型ターミネーターが登場し、シュワルツェネッガーが善人として主人公側を守るという流れであり、『ターミネーター2』の焼き直しであると言えなくもない。
今作の失敗した原因としては製作サイドがファンの『ターミネーター』シリーズに対する思い入れを計り損ねたことだ。でなければジョン・コナーの扱いがあのようになるわけがない。
もちろんただそれだけではなく、『ターミネーター:ニュー・フェイト』には新しさもある。
特に任務を終えたターミネーターが人間として社会にとけこんでいるというのはその最たるものだろう。
映画における人工知能というのは悪として描かれるのが圧倒的だった。古くは『メトロポリス』、『2001年宇宙の旅、近年では『アイ,ロボット』『トランセンデンス』もそうだろう。
何より『ターミネーター』シリーズがそうだったではないか。
『ターミネーター2』で当初サイバーダインが開発した軍事システムのスカイネットは、爆撃機の実戦テストにおいて完璧な結果を残すなど、最初は人間にとって有益なものとして描かれる。
しかし、ひとたび自我を持つと、それが行き着く先は人類への反旗なのであった。
前述の作品たちもそうだ。例えば『アイ,ロボット』ではシカゴの保安システムのヴィキが人類を守るため、殺人という方法でその数を減らし調整しようとする。そして、脅威となったAIに対して人間や善玉のAIが戦いを挑んでいくのがこれまでのある種のセオリーだった。
『アイ,ロボット』だとサニー、『ターミネーター2』ではシュワルツェネッガー演じるT-800がそうだろう。ここで特筆したいのはいずれも『善の側に行くように仕向けられたAI』だということだ。
サニーにはロボット三原則を無視できるシステムを、T800にはジョン・コナーを守るというプログラムをそれぞれ施されていた。つまり、「最終的に人間がコントロールできなくなったAIはやがて脅威になる」という文脈で語られていたということだ。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』が画期的な部分はAIが自発的により良い方向へ進化するという「希望」の事実を描いた点だ。そして、それは『ターミネーター2』でジョンが問いかけた「学習していくことでより人間らしくなれるのか?」ということへの返答でもある。性善説、性悪説という言葉があるが、機械にはどちらも当てはまらない。言い換えれば、だからこそ機械=悪と決めつけるのはフェアではない。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』はそういった意味ではAIに対して非常にニュートラルな答えを出している(もちろん、それでも『ターミネーター』シリーズであるからには敵はAIでなくてはならないが)。
本作の続編構想について、ジェームズ・キャメロンは「人間とAIの関係をもっと深く掘り下げたい」と語ったものの、本作の興行収入から、続編の見通しは厳しいものとなっている。
評価・レビュー
64点
28年ぶりにジェームズ・キャメロンのシリーズ復帰ということでにわかに注目を集めた本作。
そこには女性の台頭やAIによるシステムの支配など現代的なテーマもあり、また「任務を終えた後のターミネーター」というこれまでにない視点も提供しているものの、唯一ジョン・コナーの存在を軽視している点だけは誤算というべきだろう。
制作者はそのことを物語における黒いシミ程度に思っていたのかもしれないが、シリーズのファンからすると銃弾で胸を撃ち抜かれたようなものだろう。
ファンの想いを読みきれなかったということと、『ターミネーター3』以降の過去作を設定の上ではリセットしているものの、物語としては同じようなストーリーは避けざるを得なかったという部分もあるのかと感じる。
スカイネット無き後の世界であったり、人間社会に溶け込むターミネーターなど、これまでのターミネーターシリーズの世界観を大胆に覆すことはキャメロンでなくてはできなかったことだろうが、どうしてもその一点が心に影を残す作品。
作品情報・キャスト・スタッフ
2019年製作/ 129分/アメリカ
監督
ティム・ミラー
脚本
ジョン・ブランカート
マイケル・フェリス
主演
リンダ・ハミルトン
アーノルド・シュワルツェネッガー
マッケンジー・デイヴィス
ナタリア・レジェス
ガブリエル・ルナ
ディエゴ・ボネータ