『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

概要

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は2022年に公開されたマット・リーヴス監督、ロバート・パティンソン主演のスーパーヒーロー映画だ。

あらすじ・ストーリー

幼い頃に両親を何者かに殺された青年、ブルース・ウェインは2年前からバットマンとしてゴッサムシティで自警団的な活動を開始していた。
ゴッサムでは丁度新しい市長選挙が盛り上がりを見せていたが、リドラーと名乗る男に現職市長が殺される。
リドラーは事件現場にある謎解きを残していた。バットマンと、彼の理解者であるジム・ゴードンは答えを探し、リドラーに近づこうとするが、リドラーはバットマンを嘲笑うかのように次々に殺人事件を起こしていく。
犯行現場の謎を解くにつれて、ゴッサム・シティ全体を揺るがす「嘘」が明らかになっていく。ブルース・ウェインもまたその嘘に巻き込まれていく。
そして、リドラーの次の標的はブルース・ウェインになる。

感想・解説

「『ジョーカー』の衝撃は序章に過ぎなかった」とのナレーションから『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の予告編は始まるのだが、結果としては『ジョーカー』は超えられなかったというのが正直なところだろう。
ただ、『ダークナイト』『ジョーカー』バットマン映画においてこの2つの作品が築き上げたものはあまりに大き過ぎる。
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の作品自体は今までにないほどのダークなバットマン。オリジンでも今のバットマンでもなく、活動を初めて間もない時期を描いた作品で、だからこそブルース・ウェインの内面や繊細さ、まだ正義を確立できていない危うさなどが映画を奥深いものにしている。『ダークナイト』『ジョーカー』がなければ間違いなく最高のバットマン映画だ。
監督のマット・リーヴスはブルース・ウェインのキャラクターを創造するにあたってニルヴァーナのボーカリスト、故・カート・コバーンを参考にしたという。自身の在り方に悩み、27歳でショットガン自殺という結末を迎えたカート。
今作のブルース・ウェインは過去のバットマン映画に見られたようなプレイボーイではなく、隠遁者のような生活を送り、人前にはめったに姿を現さない。マットは「ブルースにとってバットマンは中毒だ」と語っている。
悪人退治と言えば聞こえは良いが、要はブルースの行動の大きな動機は復讐だ。両親を奪った「悪」に対してブルースは復讐するためにバットマンとしてゴッサムに出現しているにすぎない。
たまたま復讐と正義が重なりあった所にバットマンは存在している。

『ジョーカー』は主人公のアーサー・フレックという人物が如何にしてジョーカーに変貌したのかを丁寧に追っていく。監督のトッド・フィリップスいわく『ジョーカー』はアーサー・フレックの人物研究という意識で撮影したとのこと。
そうであるならば、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』はヴィランであるリドラーよりも、彼によって巻き起こる殺人の謎解きに焦点を当てており、『ジョーカー』ほどの迫力を得られないのは仕方のないことかもしれない。
もっとも、本来のバットマンに戻ったとも言える。

ちなみにリドラーを演じたのはポール・ダノだが、『リトル・ミス・サンシャイン』のお兄ちゃん役として覚えている人もいるのではないだろうか。

ただ、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』はエンタメ映画、アメコミ映画として観た場合は十分に楽しめる作品だ。

評価・レビュー

83点

クライマックスへの盛り上がり、新しく提示されたブルース・ウェイン、バットマンのキャラクター、これ以上ないダークな質感。
先にも書いたようにアメコミ映画、エンタメ映画としてなら十分に合格点だ。
ただ、『ダークナイト』『ジョーカー』ほど時代を撃ち抜いた作品ではない。バットマン映画に何を求めるかの違いだが、個人的にはもっと今の時代のあり方を映画に込めてもよかったのではと思う。

作品情報・キャスト・スタッフ

2022年製作/175分/アメリカ

監督
マット・リーヴス

脚本
マット・リーヴス
ピーター・クレイグ

主演
ロバート・パティンソン
ゾーイ・クラヴィッツ
ポール・ダノ
ジェフリー・ライト
ジョン・タトゥーロ

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。