『マディソン郡の橋』恋愛映画の名作

概要

『マディソン郡の橋』は1995年に公開されたクリント・イーストウッド監督の恋愛映画。ロバート・ジェームズ・ウォラの同名小説の映画化。
主演はクリント・イーストウッドとメリル・ストリープ。

あらすじ・ストーリー

1989年の冬、母のフランチェスカの葬儀のために帰ってきたマイケルと妹のキャロラインは、母の遺書から「遺灰をローズマン・ブリッジに撒いてほしい」という願いを知る。

その裏には誰にも秘密にしてきた一つの恋があった。

1965年の秋、フランチェスカは夫と子供たちが子牛の品評会のために隣の州へ行くことから、彼らの留守中の4日間、一人で過ごすことになった。

一人になったフランチェスカは、ある男から道を訊かれる。彼の名はロバート・キンケイド。ナショナル・ジオグラフィックのカメラマンで、ローズマン・ブリッジを撮影しに来たのだという。

こうして、ロバートとフランチェスカは知り合いになる。そしてフランチェスカはロバートを夕食に招待する。

そこから二人の距離は近づいていくのだった

感想・解説

まだ小学生の物心もついていない頃に断片的に観た程度の作品ではあったが、大人になって観ると、これほどまでに良作だったのかと驚いた。

特にフランチェスカを演じたメリル・ストリープが素晴らしい。妻として母として生き、それでも平凡な日常と刺激的な恋の間で揺れる一人の女性を強烈に演じてみせた。

思うに今作の魅力は初老の男性と中年の主婦の恋愛にあるのではないと思う。

ロマンティックな恋愛映画であるのは確かなのだが、それでも日常から切り離された夢のような4日間と、再び現実の世界に戻ろうとしているそのギャップのリアルさが見事だ。

クリント・イーストウッド演じるロバートはフランチェスカに一緒に家を出ようと誘うも、荷物をまとめたフランチェスカの表情を見て、一人で家を出ていく。

その後、帰ってきた夫と車に乗るフランチェスカは土砂降りの雨の中に立っているロバートを見つける。

このロバートがなんていうのか、濡れたみすぼらしい孤独な老犬のように映る。

それは好きな仕事で旅人のようにそこかしこを巡るロバートの一つの真実の姿でもあるだろう。

フランチェスカは車のドアに手を掛けるが、結局車から出ることなく、ロバートとの関係はそれっきりになってしまう。

この葛藤が素晴らしく切ない。あえてついていかないという選択を貫いたフランチェスカの行動が、その4日間をより眩しく輝かせている。

評価・レビュー

87

恋愛映画というジャンルでもクリント・イーストウッドはこれほどの作品を作り上げることができるのかと驚嘆する。

再会も連絡すらも叶わなかった、生涯忘れられないわずか4日間の恋。

もし、ロバートに着いて行っていたらと考えると、これほどロマンティックな作品にはならなかっただろう。着いていくという選択はとても映画的であり、もっと言えばハリウッド的な選択とも言えただろうが、その道を選ばないところにイーストウッドの誠実さを感じる。

ただ、不倫に嫌悪感を抱く人にはおすすめできない。

作品情報・キャスト・スタッフ

1995年製作/134分/アメリカ

監督
クリント・イーストウッド

脚本
リチャード・ラグラヴェネーズ

主演
クリント・イーストウッド
メリル・ストリープ

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。