『グレイテスト・ショーマン』バーナムは本当に善人だったのか?

概要

『グレイテスト・ショーマン』は1995年に公開されたジョン・マクティアナン監督、佐藤浩市主演のコメディ映画。

あらすじ・ストーリー

感想・解説

冒頭から圧巻のミュージカルシーンに戸惑う間もなく、映画の世界に引きずり込まれる。楽曲、演出すべてが素晴らしいオープニングだ。

だが、そこから映画の魅力は一気に減退していく。本作は実在の興行師であるP・T・バーナムを主人公にした映画なのだ。

彼がマイノリティを集めて作り上げた独創的なサーカスは同時にマイノリティの彼ら自身のアイデンティティと居場所を確立させることになったのだが、当のバーナム自身は名誉や名声を求め、成功を目指して彼らや家族を蔑ろにするようになっていく。

もちろん、ハッピーなエンターテインメント・ミュージカル作品なので、バーナムも最後には改心するのだが、そこに至るまでの時間、主人公に共感できないもどかしさがついて回るのだ。

特に映画では描かれないバーナムの実像を見ると、当時の基準で見れば許容範囲だったかもしれない行いでも、今の基準から見ると完全にアウトだ。

映画には出てこないが、バーナムの博物館を設立する前には黒人奴隷の女性、ジョイス・ヘスを買い取ってそのうえ「ジョージ・ワシントンの元乳母で160歳を超えている」と宣伝して全米を巡業したなどの経歴がある。

また、映画ではバーナムの博物館でショーを行い、それが初めての成功のように描かれているのだが、実際はこの黒人の見世物でも成功を収めていたという(映画の中でも描かれているように当時の見世物小屋はマイノリティたちの自活の数少ない場所の一つであったことは事実でたが)。

『グレイテスト・ショーマン』は音楽の面では比類なきほど素晴らしい。

だが、実在の人物を描くには、P・T・バーナムはいささかグレーな人物だったのではないか。そう思わざるを得ない。そう考えると、バーナムを今作はあまりに善人として描きすぎているのではないかという気もするがどうだろうか。

評価・レビュー

66

『グレイテスト・ショーマン』の音楽やミュージカルの演出は確かに素晴らしい。監督のマイケル・グレイシーは本作が長編映画監督デビュー作となるが、それを全く感じさせない。

だが、やはりそれ以外の人物描写にはもう少し気を使うべきであろう。

言いたいことをあれこれ言ってしまったが、今作はオープニングだけでも一見の価値はある。是非体験してほしい。

作品情報・キャスト・スタッフ

2017年製作/ 105分/アメリカ

監督
マイケル・グレイシー

脚本
ジェニー・ビックス
ビル・コンドン

出演
ヒュー・ジャックマン
ザック・エフロン
ミシェル・ウィリアムズ
レベッカ・ファーガソン
ゼンデイヤ
キアラ・セトル

>CINEMA OVERDRIVE

CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。