概要
『悪魔のいけにえ』は1974 年に公開された トビー・フーパー監督、マリリン・バーンズ主演のホラー映画。
はっきり言って1970年代前半のホラー映画の中では抜群に怖い。
公開当時上映禁止になった国も数多くあるが、その反面残酷描写やレザーフェイスへの感情移入を拒否したドキュメンタリー風のタッチなど、後のホラー映画に大きな影響を及ぼした作品でもある。
また、今なお続編やスピンオフ、前日譚が作られるなどの人気シリーズにもなっている。
あらすじ・ストーリー
1973年のテキサス。同地では墓荒らしが多発しており、サリー・ハーデスティと兄のフランクリンは祖父の墓の無事を確かめるために友人や恋人と連れ立ってテキサスを訪れていた。
一行は道中でヒッチハイカーを車に乗せるもヒッチハイカーがナイフでフランクリンに斬りかかるなどの異常行動に出たため、彼を車から下ろす。
しかし、ヒッチハイカーは自らの血で車に「印」を残す。
墓の無事を確かめたサリーらだったが、帰りのガソリンが少なくなっていることに気づく。ガソリンスタンドにもガソリンは売っておらず、彼らはガソリンを分けてもらおうと古びた洋館に立ち寄るが、そこで想像を絶する恐怖を味わうこととなる。
感想・解説
『エクソシスト』のようなオカルトではなく、現代のフォークロア(都市伝説)とも言えるリアルな怖さを描いた作品だ。
人里離れた片田舎には常識では計れない奇人や異常者がいるという意味ではヒルビリー・ホラーの古典とも言えるかもしれない。
ありえないと思うけど、ひょっとしたらこんな人達が存在するかもという恐怖だ。
監督のトビー・フーパーは、クリスマスのレジ待ちでイライラしていたところにチェーンソーが目に止まったという。
そこでチェーンソーを振り回す自分を妄想した。それが今作の殺人鬼であるレザーフェイスの元になったのだ。
『悪魔のいけにえ』の着想元としてエド・ゲインの事件が語られることがある。
エド・ゲインは1954年から57年にかけて女性を殺害、また死体を掘り起こし、解体し、皮や骨を日用品や衣料として利用していた。
トビー・フーパーによれば、確かにエド・ゲインの事件を聞いたことはあるものの、それが直接の着想になったかと言われればそれは定かではないという。
しかし、完成した作品はきっかけがどうだとかを彼方へ投げ飛ばすほどの禍々しい狂気に満ちていた。
もともとはトビー・フーパーが少ない予算の中でなんとく作り上げた文字通り「お手製」のホラー映画だ。
ソーヤー家に捉えられたマリリン・バーンズが指を切られるシーンがあるが、これはフェイクではなく実際に指を切られている。
また、レザーフェイスを演じたガンナー・ハンセンは入浴もできず、強烈な異臭を漂わせていたという。
そんな過酷な環境での情熱が狂気を生んだのだと思う。
評価・レビュー
90点
当然ながらホラー映画が苦手な人には軽々しく勧められる作品ではない。
だが、今作の芸術性や映画史における重要性から、ホラーが苦手な人にも是非観ておいてほしい作品ではある。
低予算かつ撮影日数もない中で制作された今作にはまさに作り手の情熱と工夫が詰め込まれている。
作品情報・キャスト・スタッフ
1974年製作/83分/アメリカ
監督
トビー・フーパー
脚本
主演
マリリン・バーンズ
ガンナー・ハンセン