概要
『アンブレイカブル』は2000年に公開されたM・ナイト・シャマラン監督、ブルース・ウィリス主演のサスペンス映画。
あらすじ・ストーリー
スタジアムの警備員として働くデヴィッド・ダンは、ある時乗車した列車が脱線する事故に遭遇する。
生き延びたのは唯一ダン一人。その上、彼は傷一つ負ってはいなかった。
事故の唯一の生存者となったダンはある時、一通の手紙を受け取る。
「今まで病気や怪我になったことはないか?」
その手紙の送り主を訪ねるダンと息子。
差出人はイライジャという黒人の男性だった。彼は生まれつき骨が脆いという病気を抱えており、些細なことでも骨折を繰り返していた。そんなイライジャにつけられたあだ名は「Mr.ガラス」。
病気のせいで外で遊べないイライジャはコミックに没頭するようになり、コミックをテーマにした画廊を経営するまでに至っていた。
イライジャはコミックに没頭するうちに、世の中には自分とは真逆のスーパーヒーローのような存在がいるに違いないと思うようになっていた。
そして、その男がダンであった。
ダンはイライジャの考えを妄想だと捉え、大学の頃、妻とドライブしていた時に交通事故に遭い、怪我が原因でフットボール選手の道を諦めたと伝える。
しかし、イライジャはダンこそがスーパーヒーローであると頑として譲らなかった。
そして、ダンには妻にも伝えていない事実があった。
実はダンは生まれてから怪我も病気もした覚えがなかった。怪我をしたというのも、フットボールをやめて現在の妻と結婚したかったためについた嘘だった。
やがてダンは半信半疑だったイライジャの言葉を信じ始めるようになる。
感想・解説
M・ナイト・シャマランのブレイク作でもあり、大ヒット映画の『シックスセンス』の次作となる『アンブレイカブル』だが、『シックスセンス』に引き続きブルース・ウィリスが主役を務めている。
ただ、今回相手を務めるのはハーレイ・ジョエル・オスメントではなく、サミュエル・L・ジャクソンだ。
ブルース・ウィリスとサミュエル・L・ジャクソンの共演は『ダイ・ハード3』以来となる。そもそもイライジャ役にサミュエル・L・ジャクソンが抜擢されたのはブルース・ウィリスの推薦もあったようだ。ちなみにイライジャはコミックの熱狂的なマニアでありコレクターという設定だが、サミュエル・L・ジャクソンもまたアメコミの熱心なファンとして知られている。
さて、本作の魅力はその演出力にあると思う。
『アンブレイカブル』を観終わった人は頭の中で時系列で物語を振り返ってみてほしい。ストーリー自体は驚くほどシンプルなことに気づくはずだ。
だが映画を観たときにはそうは思えなかったと思う。M・ナイト・シャマランの他の作品同様に、『アンブレイカブル』も普通の世界の中に異常者(この場合はイライジャとダン)が存在するという枠組みをとっている。
普通と異常の軋轢をものすごくリアルに丁寧に描いていることが『アンブレイカブル』の最大の魅力ではないか。
『アンブレイカブル』の世界にはバットマンもいなければスーパーマンもいない。本当にあんなコスチュームの人物がいたら変態扱いされるだけだろう。
『キック・アス』の感想の中で、私は「スーパーヒーロー映画が苦手だ」と述べているのだが、その理由の一つはリアルではないからだ。
あんなスーツを着ていたら、ヒーロー以前にダサくないか?
一人の男が世界を滅ぼす巨悪と戦う?
まぁ、それ以前にMARVEL映画の予告編を観ていると「毎回毎回地球は危機を迎えているなぁ」と呆れてしまうが。
いずれにせよ、醒めた目で見ればカッコいい以前に滑稽なのだ。
その点、『アンブレイカブル』はリアルだ。ダンが戦うのは殺人犯などの凶悪犯。現実的には世界を滅ぼそうとする者たちより、殺人犯の方が圧倒的に多いだろう。
そしてダンはケバケバしい派手なボディースーツを纏うわけではなく、防水型のポンチョを身に纏う。それは職場で支給されたものでまさにリアルなアイテムだ。一方でポンチョはロング丈なのでスーパーマンのマントのようにも思える。
『シックスセンス』があまりに鮮烈だったため、その後のシャマランの作品の評価は必ずしも高いとは言えない場合が多かったが、M・ナイト・シャマラン作品の本当の魅力はどんでん返しの結末ではない。視座の選び方と演出にこそ、シャマランの魅力はあるのではないだろうか。
評価・レビュー
82点
ありふれた現実の世界で誕生するヒーローがどのようなものか、これはこれで斬新な作品だと思う。
エモーションの点では『シックスセンス』にはとても及ばないものの、観て損はない一本と言える。
作品情報・キャスト・スタッフ
2000年製作/106分/アメリカ
監督
M・ナイト・シャマラン
脚本
M・ナイト・シャマラン
主演
ブルース・ウィリス
サミュエル・L・ジャクソン
ロビン・ライト・ペン
スペンサー・トリート・クラーク
シャーレイン・ウッダード
イーモン・ウォーカー