『ワンダーウーマン 1984』はなぜひどいと言われたのか?前作から変わってしまった理由とは?

概要

『ワンダーウーマン 1984』は2020年に公開されたパティ・ジェンキンス監督、ガル・ガドット主演のスーパーヒーロー映画。2017年に公開された『ワンダーウーマン』の続編となる作品だ。

あらすじ・ストーリー

『ワンダーウーマン』の時代から66年後の1984年。

ダイアナはスミソニアン博物館で考古学者として勤務する傍ら、正体不明のヒーローとして日夜犯罪者退治に勤しんでいた。

ある日、鉱物学者のバーバラという女性が新しくスミソニアン博物館に赴任してくる。冴えなくてドジだが、バーバラの優しい性格にダイアナは好感を抱く。

数日後、TVタレントのマックス・ロードが博物館に寄付を申し出る。ダイアナは断ろうとするが、マックスはバーバラを指名し、彼女に博物館を案内してほしいと頼む。実はマックスが狙っていたのはバーバラが鑑定を依頼されていた「願いを叶える石」だった。

バーバラを籠絡させ、石を手に入れたマックスは石と一体化し、世界中の権力をその手に集めていくのだった。

感想・解説

前作『ワンダーウーマン』は興行的にも批評的にも大成功を収めた作品となったが、比べると本作は賛否両論の作品となった。レビューを見ていてもひどいという意見が目立つ。

パティ・ジェンキンスの言うように、一作目とは全く物語の視点が異なっている。

前作は第一次世界大戦の真っ只中であり、戦いを司どる神と戦うという神話的な要素も強かった。しかし、今作では平和な時代に人々の心にある悪の部分とダイアナは戦う。そういった意味では確かにスケールダウンしているし、神話的な要素が消え、人間の持つ個人的な欲望が、世界を危機に陥れている。

ダイアナの存在もまた前作と今作ではその意味が変わってきている。

前作の『ワンダーウーマン』ではダイアナは戦う女性神だった。それが愛を司る神へと成長していく物語であった。しかし、『ワンダーウーマン1984』ではダイアナは一転してただのスーパーヒーローの一人になってしまった印象を受ける。

興味深いのは1984年と今現在の社会に多くの共通点が見られることだ。

パティ・ジェンキンスは物語の舞台を1980年代に設定した理由について、「今の時代の原点だから」と言う。

当時はまだインターネットもない時代だが、あらゆる欲望が肥大化しているという意味では今の時代とそう代わりはない。

マックスのファッションは1987年の映画『ウォール街』に登場するヴィランで強欲な投資家、ゴードン・ゲッコーを参考にしたそうだが、もう一人、前大統領であるドナルド・トランプもマックスのキャラクターに取り入れられているという。そういった事柄を見ると、『ワンダーウーマン 1984』はやはり現在を描いた映画ということもできる。

逆に言えば、今と当時の違いはインターネットの有無くらいかもしれない。

『ワンダーウーマン』シリーズはさらなる続編まで制作が決定しているというが、そのときはどのような作品を見せてくれるのか、楽しみである。

評価・レビュー

72点

本作は賛否両論だと先に書いたが、『ワンダーウーマン』と比較して中途半端であるのは確かだ。ダイアナとバーバラの関係性がどうなったかなど、気になる物語が回収されていない点は残念に思う。

作品情報・キャスト・スタッフ

2020年製作/151分/アメリカ

監督
パティ・ジェンキンス

脚本
パティ・ジェンキンス
ジェフ・ジョーンズ
デヴィッド・キャラハム

主演
ガル・ガドット
クリス・パイン
クリステン・ウィグ
ペドロ・パスカル
ロビン・ライト
コニー・ニールセン
アムール・ワケド
クリストファー・ポラーハ
ナターシャ・ロスウェル

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。