『ワンダーウーマン』

概要

『ワンダーウーマン』は2017年に公開されたパティ・ジェンキンス監督、ガル・ガドット主演のスーパーヒーロー映画。

あらすじ・ストーリー

かつて、全宇宙を統治した神のゼウスは、自らに似せて人間を作ったが、ゼウスの息子のアレスは人間に邪心を植え付け、堕落させた。

事態を憂慮したゼウスは人間のために女性だけのアマゾン族をつくったが、アマゾン族は人間の奴隷として暮らすことを拒絶し、反乱を起こす。

そして、アマゾン族は世界から隔絶した暮らしをしていたが、ある時そこに戦闘機が墜落する。アマゾン族の王女であるダイアナはそのパイロットのスティーブを救うも、追ってきたドイツ軍に叔母のを殺されてしまう。

スティーブは世界は第一次世界大戦の真っ只中で、数千万人もの人が亡くなっていると語る。

それをアレスの仕業と考えたダイアナは、戦争を止めるためにスティーブとともに人間の社会へ旅立っていく。

感想・解説

神話、性差別、人間の背負った業、様々な側面を描いたスーパーヒーロー映画だ。

監督のパティ・ジェンキンスにとっては14年ぶりの監督作となった。前監督作の『モンスター』の頃から『ワンダーウーマン』の監督には興味があったそうだが、今回ようやく機が熟したということでもあるのだろう。

今作のヒットには、女性の力強さを全面に押し出した内容が時代ともマッチしていたのも大きかったと思う。

ハリウッドの一大権力者であったハーヴェイ・ワインスタインの性加害の報道を発端として、それまであまり注目されてこなかった、男性と女性の性差別に社会の厳しい目が注がれるようになった。

そして以降のハリウッドでは、女性を主役にした作品が増えた。その事自体は良い事だとは思うが、それと映画として良質かどうかはまた別の問題だ。

『ワンダーウーマン』では、ダイアナが戦闘が膠着し、無人地帯(ノー・マンズ・ランド)となっている所を一人進んでいく場面がある。

この場面は今作でパティ・ジェンキンスが最も力を入れた場面だという。

ノー・マンズ・ランドは無人地帯の意味だが、ここのマンを「男」と読むこともできる。男には通れない、しかし女なら?

パティ・ジェンキンスは「言葉遊び」と言いながらも、そこにはそれまでの男性優位の社会についての強烈なアンチテーゼがある。

だが、ただ性差を描くだけならばこれだけの評価は得られなかっただろう。

ダイアナはアレスとの戦いの中で愛に目覚める。

本当の悪はアレスではなく、どんな人々の心にも存在する。

だが、それでも人々を守り、愛することを覚悟する。戦いを終わらせるのは男でも女でも、力でもなく、「愛」であることに気づいたからだ。

その普遍性はフェミニズムを超えた力強さがある。女性を主役にした映画は多く作られているが、ここまで踏み込んだ作品はあまりないだろう。

スーパーヒーロー映画の没落が著しい昨今だが、本当に観るべき価値のある一本だ。

評価・レビュー

84点

かなり点数に迷ったが、今回はこの点数にした。スーパーヒーロー映画はもともとあまり好きではないが、あえて言うならマーベル映画よりもDC映画の方に好感を抱いている。DC映画の方がシリアスでより社会的なメッセージを含んでいるように感じるからだ。

その中でも『ワンダーウーマン』は突出した一本だろう。ややスーパーヒーロー映画ならではのケレン味や、ネーミングセンスが鼻につく部分がないわけではないので、この点数にはしたが、おすすめの作品であることには変わりない。

作品情報・キャスト・スタッフ

2017年製作/141分/アメリカ・中国

監督
パティ・ジェンキンス

脚本
アラン・ハインバーグ

主演
ガル・ガドット
クリス・パイン
ロビン・ライト
ダニー・ヒューストン
デヴィッド・シューリス
コニー・ニールセン
エレナ・アナヤ

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CINEMA OVERDRIVE

ロックミュージックに欠かせないエフェクター、OVERDRIVE。
それはクリーンな音に歪みを与え、それまでの音楽に新しい可能性をもたらした。
CINEMA OVERDRIVEもまた「個人的な評価」という歪みによって、映画の捉え方・楽しみ方を広げていきたい。